やってきた場所は、まだ行ったことのない西園寺家の別荘の一つ。
海辺のそばで、それは景色がとても綺麗な場所だった。
「うわぁ!すごい!」
バイクをおりてその絶景にしばし目を奪われる。
ヘルメットを取って、髪をばさばさと直したのだけれど…。やっぱり重たいヘルメットだ。あっという間に髪はぺったんこ。
そんな自分の髪の毛を気にしていると、
バサッ
「わっ!」
目の前が一瞬暗くなる。何があったのか一瞬わからなかったのだけれど…
「…帽子?」
それは黒色のハットだった。
少しだけ…煙草の匂いがする。
「髪は後で直してさしあげますから。今はそれで我慢して下さい」
それは柊さんのハットだった。一体いつの間に出したのだろう。
私が景色に目を奪われているうち?
それより、どうして帽子なんて…。
あ。そっか。
私はちらっと柊さんの方を見た。
当たり前だけれど、柊さんだってヘルメットを被っていたのだ。
少しだけ髪をばさばさと散らしている柊さんが目に映る。
その様子を見て、私はくすりと笑うのだった。
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