思いがけない柊さんからの誘いに、私の心は落ち着かない。

「どうしよう…ていうか、どうしよう」

 ただでさえ、緊張するのに…もうどうしたらいいのかわからないよ。

 そんな気持ちを抱えたまま、私は時間までそわそわしているのだった。


 午後になって。私は支度を整えると、鞄にこっそりとクッキーを忍ばせる。
 きっと、渡すタイミングはあるはずだから。
 そして、そっと部屋を出ると玄関へと足早に駆けて行った。

 外に出ると、すでに柊さんがいた。
 近くにはバイクもある。

 あ…私服…。

 休暇なのだから当然なのだけれど。
 その、いつも見ることのない私服姿に私の気持ちはパンク寸前。
 柊さんはボーダーニットにブラックジーンズとラフな格好。でも、それはラフ過ぎない、そうどこかしっかり『柊さん』と言った感じ。

「お待たせしました!」

 声を掛けると、柊さんはこちらをちらりと見てから私にヘルメットを渡した。

「…あ」
「…今日は天気が、良いですからね」

 そういうと、こちらを見ずにジャケットを羽織ってヘルメットを被る。
 その有無を言わさない姿を見て、私は思わず笑みが零れた。

「はい」


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