3月14日。
 あの後、順調にクッキーを焼く事が出来て可愛いスノーボールが出来上がった。
 どうせならと、ココアのスノーボールも一緒に作ったから…少しだけ時間は掛かったのだけれど。

 部屋に持って行ったスノーボールはとても良い香りがして。
 思わず一つ味見したり。

 味は上々。これなら、多分渡しても大丈夫…だと思う。

「問題は…いつ渡すか…だよね」

 机の上に置いたラッピングしたクッキーがひとつ。
 椅子に座りながらぐるぐると考えていた。

 今日は日曜日だけれど、そんなの…関係ないからなぁ、柊さんには。
 やっぱり渡すならお仕事終わりかなぁ。
 でも、その時ってきっと御堂さんもいるよね。
 うぅ、それはちょっといくら御堂さんでも渡しづらい…。

「…一番肝心なことだけれど、どうしよう!」

 机に突っ伏して考えてもなかなか答えは出てこなくて。
 こんな感じで午前中は終わってしまうんじゃないかと思った時だった。

 コンコン。

 無機質な木の音が部屋中に鳴り響く。

「はぁい」

 誰だろうかと思って、部屋のドアを開けると…そこに立っていたのは柊さんだった。
 柊さんが私の部屋に来るなんて。ちょっと珍しいかも。いつも来るのって御堂さんだから。

「急に申し訳ございません。今、大丈夫ですか?」

 いつもの調子で話す柊さんに、私はこくんと一つ頷く。
 すると、柊さんは心なしか少しだけ頬を赤くしてこう言った。

「その…、奏様は今日何かご予定がございますか?」
「…へ?」

 想像もしていなかったその言葉に私は変な声で返事をしてしまう。
 柊さんは少し頬を掻きながら言葉を続けた。

「本日は、ホワイトデーですから」
「え、あ、はい」
「お嬢様から、チョコレートを戴いておりましたし。何か、お返しをと思いまして…」
「…え!?」

 柊さんからはとても想像出来ない言葉の数々に、私は間抜けな返事をするばかり。
 柊さんは相変わらず少しどこかくすぐったそうな顔をしている。

「今日の午後から休暇を戴いているので、お嬢様が宜しければ…ですが…」
「空いてます!大丈夫です!」

 少々歯切れの悪いその言葉に、私は思わず声を被せてしまった。
 だって、あまりにも嬉しかったから…。

 そんな私に柊さんは少しだけ驚いた様子。
 でも、すぐにいつもの柊さんに戻った。少しだけ、口元は笑っていたけれど。

「では…今日は天気も良いですし…少し出掛けましょうか?」
「はい!楽しみにしてます」

 そして、私は満面の笑みで返事をしたのだった。


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