ところで。
どうして今日、私がハリスくんとデートすることになったのかというと。
実は、ハリスくんの方からお誘いがあったのだ。
『今度日本で…有名なバイオリニストの演奏会があるんだけれど…一緒に行かない?』
って。
その日程が、本日ホワイトデーだったわけで。
口にこそ出さなかったけれど、ハリスくんはとても楽しみにしているようで。
「何、奏?何か僕の顔についてる?」
「ううん。なんでもない」
少し恥らいながらのお誘いだった。
でも、私はそんなところも含めて…すごく嬉しかったんだ。
「演奏会なんて、なんか緊張しちゃうなぁ」
「そんなことないよ。演奏会って言ったってラフなものだからね」
「でも。私、高校の定期演奏会くらいしか行ったことないよ?」
「別に…そんなノリでも構わないから」
緊張からか何なのか、変に焦る私を見てはくすくすと笑うハリスくん。
その笑顔は間違いなく少年の笑顔なのに。
仕草はどこか大人で。
わぁ、なんか…違う意味でもドキドキしてきた。
そんなことをぐるぐると考えながら…会場へと向かうのだった。
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