「前に、瞬くんが冬の星座は綺麗だって言ってくれたでしょ?だから見てみようと思ったんだ。だけど…」
「けど?」
私は瞬くんと肩を並べながら、ゆっくりと歩いていた。
そのスピードはとてもゆっくりとしたもので、今までに無いくらいゆっくりしていたかもしれない。
それは少しでも瞬くんと一緒にいたかった…から。
「全然わからなくって。どうやったらわかるようになるのかなぁって考えてたところなの」
「そうだったんだ。冬の星座は解りやすいほうだけれど…確かに最初はわからないよね」
もうお手上げというようなポーズを取って見せた私を見て、瞬くんはくすりと笑う。
「瞬くんはすごいね。色んな星を知ってる」
私は少し悔しいと思いながら空を見上げて呟いた。
瞬くんの顔は見えなかったけれど、きっと笑っているんだろうなぁ。
「じゃあ、奏ちゃん」
「なぁに?」
「今度の週末、プラネタリウムに行こう」
「プラネタリウム?」
パッと視線を瞬くんの方に戻せば、瞬くんは少し照れた顔をしながら微笑んでいる。
「プラネタリウムなら、ここよりももっともっとたくさんの星が綺麗に見える。それに、」
「それに?」
「夜空に矢印が出てくるからわかりやすいよ」
くすくすと笑いながらそう言った瞬くん。
私もそれにつられてくすくすと笑い始める。
少し冷たい夜風なんて気にならないほどの温かな空間だ。
「確かに。でも、どうして今週末なの?」
「14日、だから」
「え?」
「3月14日。ホワイトデー」
「…あ」
「バレンタインデーのお礼に、どうかな?」
すっと自分に向けられた掌。
私はそれを躊躇わずに取った。
「喜んで」
ふわりと笑って。
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