とある日の夜。
 私は少し暗い場所に立っていた。
 夜の散歩の途中、と言ったところだろう。
 勉強をしていたのだけれど…それに少しだけ疲れてしまい、気分転換にと外に出てきたのだった。

「あれがー…えっと、なんだっけ」

 空を見上げて見つめるのは3月の星空。
 カーディガンの袖を指先の方まで引っ張って、私は星空観察に夢中になっていた。

 夜空に瞬く星々は3月で春先とは言え、まだ冬の星座が残っている。
 以前、瞬くんが冬の星座が一番よく見えると教えてくれたのを思い出して見てみたのだけれど…。

「学校の授業でも教わった気がするんだけれどなぁ…有名な星。全然覚えてない私もどうなのかしら」

 うぅんと思わず呻ってしまう。
 しっかりわかるのはかの有名なオリオン座だけ。そのオリオン座もわかるのは形だけで明るい星の名前もしっかり覚えていない。
 その他にも近くに綺麗に瞬く星があるのに…何ひとつわからないなんて。

「どうやったら覚えられるのかなぁ」

 ふと、私は瞬くんの横顔を思い浮かべた。
 いつだったか、瞬くんが星のひとつひとつを指差しながら教えてくれたことがあった。
 すらすらと色々なカタカナの名前を口にしていた瞬くんは妙に大人に見えて、すごく綺麗だったんだ。その顔が。


「奏ちゃん?何してるの?」


 そう、綺麗だったんだよなぁ…。
 って、あれ?私、今呼ばれた?

「奏ちゃん?」
「…え!?し、瞬くん!?」

 気づけば、すぐ近くに緑色のパーカーを着た瞬くんの姿。
 かくんと首を傾げこちらを見ている。

「星、見てたの?」
「え、う、うん!その、気分転換に散歩に来てて、それで空が綺麗だったから…」
「ふふっ。そっか。僕と一緒だ」

 ふわりと笑って見せた瞬くんの顔が、なんだかすごく大人っぽく見えた。


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