明日は3月14日。
そう、ホワイトデー。
私は…素敵なバレンタイン…もらっちゃってたし、お返しなんてって言ったんだけれど…。
『ダメダメ!折角のホワイトデーなんだからー!奏ちゃんから素敵なチョコレートもらったんだからー!』
その言葉に押し切られ。
「…うぅん…」
現在、ベッドの上に何着もの洋服が並べられている。
そして、
私は何を着て行こうか悩んでいるのだった。
「はぁ…ただでさえ…緊張するのに」
そう。相手は裕次お兄ちゃん。
私の大好きな人であり、学園のアイドル的存在でもあるのだ。
「どうしたらいいのー!?」
髪をぐしゃっとしながらも、洋服選びをやめることはしない。
かっこよくて優しくて。本当に王子様みたいな裕次お兄ちゃん。
その人に。
『ホワイトデーは俺とデートしよう!ホワイトデーデートね。決まり!どこに行くかは、俺に任せてね』
なんて言われた日には…。
「どうしたらいいのよ、私はー!」
そして、二度目の叫び。
と、その時。
コンコン…―
「へ!?あ、ど、どうぞ」
急に耳に飛び込んできたノック音。
扉を開けると、そこに立っていたのは心配そうな顔をした御堂さんだった。
「…あ」
「あ…いや、その…声が聞こえて来たので…大丈夫ですか?お嬢様…」
「は、はい…って言え…ない…感じです」
私は頭を垂れると、散乱したベッドの上を御堂さんに見せるのだった。
御堂さんは…この裕次お兄ちゃんとのやり取りを近くで見ていて知っていた人だから。
「ふふっ。そうでございましたか」
「…いざ言われると、なんか迷っちゃって」
「それでは…」
「はい?」
「お手伝い致しましょうか?お嬢様」
そっと囁くような声で。だけれど、どこか悪戯っぽいような笑顔で。
御堂さんはそう言ってくれた。
「お、お願いします!」
私はすがるような気持ちでその好意を受けることにしたのだった。
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