ドキドキは部屋に戻っても止まらなかった。
廊下で話したほんの少しの会話。
どうやら、柊さんはバレンタインデーのお返しに、と私を誘ってくれたようなのだ。
「でも、柊さんがそう言うなんて思いもしなかったから…」
少し低い柊さんの声が頭の中でこだまする。
誰も見ていないというのに、なぜか恥ずかしくなって思わず枕に顔を埋めた。
あの後、私は『考えておく』とだけ返事をした。柊さんは少しだけ笑うと礼を一つして去って行った。
本当に柊さんは…変わったなぁと思う。
今は最初とは違う意味で…ドキドキするから。
「ていうか!どうしよう!14日!え!?よく考えたらデートってこと!?」
思わず独り言だというのに大きな声が出てしまった。
慌てて口を両手で塞ぐと、そっと廊下の様子を耳で伺ってみる。
どうやら誰もいなかったみたい。
「どこ、行こう…かな」
それと、柊さんからももらったのだからお返しを…。
いろいろなことを考えていたら、妙に頭と頬が熱くなってきた。
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