「…はい?」

 思わず目を丸くして聞き返したのは言うまでもない。
 目の前に立っているのは柊さん。

 そう、柊さんだ。

 最近、その距離が少しだけ近づいたような気がしていた。
 バレンタインではすごく美味しいクッキーをもらったし…。
 自分だって勿論渡したのだけれど。

 だけれど。

 それでも、柊さんの言った言葉がどこか信じられない。

「聞き取れませんでしたか?奏様。少し早口でしたでしょうか?」

 そう言う柊さんは相変わらず淡々とした口調なのだけれど、さっきより…ほんの少しだけ照れているようにも見えた。

「え、いや。あのその…驚いた、だけです」
「驚いた…?」
「だ、だって!柊さんがそう言うことってあんまりないから」
「それは、申し訳ございません」
「え。あ、その…いえ、こちらこそ」

 なぜかかしこまってしまうのはなんでだろう。
 胸の奥底の方で心が跳ねている。ドキドキが鳴り止まない。早鐘。

 だって。


「奏様…3月14日、どこか行きたい場所はありますか?」


 彼は確かにそう言ったのだから。 


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