色々考えていると時間が経つのはあっという間で。
気づけばホワイトデーまであと少し。
兄弟たちが少しだけ忙しなく見えるのは、先月のバレンタインデーのせいかもしれない。
だって、美麗な方々ですもの。
身内の贔屓目を引いたとしても、充分かっこいいと思うんだ。
勿論、裕次お兄ちゃんだって例外ではない。
学園の王子様であるお兄ちゃんがチョコレートをもらってこないわけがなく、私のチョコレートだって、その中のたった一つに過ぎないのだろう。
それでも、あの日嬉しそうに食べてくれた裕次お兄ちゃんの顔を思い出せば、私は満足だ。
本当に嬉しそうだったから。
しかし、バレンタインデーもそうだったけれど…今年はホワイトデーも日曜日。
「みんな…大変なんだろうな」
廊下を歩きながら一人呟いていると…
「うん?何が?どうかした?奏ちゃん」
「…へ!?」
ふいに声を掛けられたのだった。
そして、そこに立っていたのは両手一杯の荷物を抱えた裕次お兄ちゃんだった。
「な、なんでもないけれど、その…それ、どうしたの?」
思わず口をぽかんと開けてしまうほどの量。
それは洋服、靴の箱などどうやら服飾品のようだけれど…
気になったのは、それが女物だってこと。
あ、もしかして、ホワイトデー用のお返し?
わぁ、西園寺家はやっぱり規模が違う。
なぁんて思っていたら。
「これ?これはねぇ、奏ちゃんへの贈り物!」
…ん?
「わ、私!?」
「へへー、すごいでしょ?全部俺が選んできたんだよ!」
にっこりと満面の笑みを浮かべて話す裕次お兄ちゃんの顔と言ったら…。
最近聞く「どや顔」ってこんな感じなのかな?って思ってしまうほど。
「ね、とりあえず、ほら、奏ちゃんの部屋行こう!これから行くつもりだったんだー」
「え?え?えー!?」
結局私は裕次お兄ちゃんに促されるまま…自分の部屋へと戻っていったのだった。
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