『これもいただきっ』
あの時の言葉が、今でも胸の奥を熱くする。
甘くて苦い、チョコ味。
結局、バレンタインデーはそのことばかり意識してしまって告白をすることが出来なかった。
手作りのチョコレートはしっかりと裕次お兄ちゃんの手に渡ったのだけれど…私の想いは私の中にしまったまま。
上手く切り出すことも出来ぬまま、気づけば1か月が経とうとしている。
「あの時の勇気は…もう、ないなぁ」
告白しようと決めたあの日。
気合を入れてこっそりと作ろうと思ったあの日。
全てはあのキスの前に消え去った。
「どんな意味だったのかも、結局わからないままなんだよね」
元々、裕次お兄ちゃんは大胆なスキンシップが多かった。
抱きつく、抱き締めるなんてことは日常茶飯事だし、お姫様扱いだってしょっちゅうだ。
だからこそ、あれもまた大胆なスキンシップの一つだったんじゃないかって、ネガティブ思考の私は考えてしまうわけです。
ふぅっと溜め息を一つ。
頬杖をついてだらりとすれば、目の前に飛び込んでくるのは『3月』と書かれたカレンダー。
そういえば、一緒にチョコレートのお菓子を食べたよな。
私も…ホワイトデーに何か用意しておいたほうが良いのかな…。
そんなことを考えようとしても、思い出すのはあの日のキス。
完全に思考回路は停止中。
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