その日以降…なぜか私はあまり雅弥くんと話す機会がなかった。
同じ屋根の下に暮らしているにも関わらず、だ。
まぁ、雅弥くんは元々部活で忙しかったし。学校では仲の良い男子たちと群れてることが多いから。
ただ…
「あ、明日どうしよう…」
ベッドの上に広がる洋服。
なぜ予定を空けておくかもわからない。どこかに出掛けるかもわからない。
ただ、一応それなりにはしておきたいわけで。
「えぇい。いいや、これにしよう!」
ある意味一番無難な服を選んだ私は、
次の日…若干後悔するのだった。
「…」
「あ?何。何かついてるか?」
「…べ、別に…」
午前10時過ぎ。
部屋にドアを叩く音が響きわたった。
がちゃりといつもの調子で開けたは良いけれど。
そこに立っていたのは、いつもと雰囲気の違う雅弥くんだった。
いつも休日はラフな格好をしている雅弥くんだったのだけれど、今日は全然違う。
いわゆるストリートスタイルで、フェイクプリントのTシャツと黒のポロシャツなんか合わせちゃって。ボトムもカーキのクロップドパンツだし。
え?何これ。どういうことですか?
対する私は、花柄ミニワンピにロールアップジーンズを合わせて。これに薄手のジャケット羽織る予定なんですが。
大丈夫ですか?釣り合いますか?
「だから、どうしたって」
「…いつもの雅弥くんと違う」
そういえば、髪型もなんか少しだけ違う?
「そうか?まぁ、でもそうかも」
あ、でも。ニカッと笑うその笑顔はいつもと同じだね。
「さて。行くぞ」
「は?どこへ?」
「どこって、言わなかったっけ?」
「何も聞いてない!」
「あ、わりぃわりぃ。じゃあ、お楽しみで良いわ」
「えぇ!?何それ!」
そして、私は色々とついていけないまま…いわゆるデートに出掛けていったわけです。
← | →