部屋でごろごろとしていたら、気づけばうとうとしていた我が眼。
 だから、なかなか気づかなかった。

…ドンドン!!

「ふぇ!?」

 それは大きな大きなノック音でした。

「奏?いんだろ?いい加減返事しろー!」

 そして、扉の向こうにいるのは…

「雅弥くん!?」
「お前、何してるわけ?良い?開けんぞ?」
「え!?ちょ、ま、待って!」

 なんて、私の言葉が通じるわけもなく。

「…あ?お前、寝てたの?」
「え、あ、はい。すいません」

 必死で抑えた小さな寝癖はとても直りそうにありません。うぅ。
 かっこ悪いなぁと思いながらも、心臓は早くも早鐘を打ち始める。
 それは絶対…さっきまでバレンタインデーのことを思い出していたから。

「そ、それで?どうしたの?」

 私は何食わぬ顔で(寝癖はついてるけれど)部屋に入ってきた雅弥くんにその理由を聞く。
 雅弥くんはくるっと椅子を回すと、自然な素振りでそれに座る。

「お前、週末空いてる?」
「へ?週末?」

 すいません。思考回路が完全復旧できてません。
 週末って何日…?14日…?
 …14日!?

「そう。週末。空いてるかどうか。ていうか、空けろ」
「え!?ちょっと待って、何そのゴーインな誘い」
「どうせ暇だろ?奏」
「暇だけど…って、ちょっと雅弥くん!?」

 復旧作業終了しました。
 週末ってホワイトデーじゃないですか!?
 どういうこと?空けろって?え?あ、確かにチョコはあげたんだけれど。

「その…バレンタインデーの…チョコのお返し」

 頬を掻きながら目線を逸らす雅弥くん。
 あれ?もしかして、思い出してますか?

 なんて考えてたら…あ、私もヤバイ。

「あ、ば、バレンタイン…そっか。ホワイトデーね」
「そ。そういうこと」

 少し照れたような笑いを見せる雅弥くんは早々と立ち上げる。

「じゃ、空けとけよ。その日」
「わ、わかった…って、ちょっと待った!」
「あぁ?」
「あぁ?じゃないって。なんで予定空けておく必要があるの?」

 それはとても素朴な疑問だった。
 何気なく普通に聞いたつもりだったのだけれど…あれ?雅弥くん、顔が真っ赤です。

「べ、別にいいだろ!」
「良くない!気になる」
「い、良いから空けとけ!良いな!それじゃあ!」

 やや強引にそう言い放つと雅弥くんはダッシュで部屋を後にした。

「…え?これって…」

 まさかデート!?


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