初キスはレモン味でなく、チョコ味でした。
ひと月経った今でも…なんでこんなに鮮明に思い出せるのか。
人間の記憶力ってすごいんだなって妙に感心してしまう。
その時の景色とか、その時の感触とか、もう全部全部。
「う…あぁぁぁぁ…」
その度に私は赤い顔をして悶えているわけなんですけれども。
最初こそ、なんかぎこちない空気が流れていたわけですが。
時間というものは偉大というかなんというか。気づけばいつもの関係に戻っていたわけです。
「あの時のあのキスは…なんだったの?」
そっと触れる唇は、先ほど塗ったリップクリームのせいでしっとりしていた。
赤くなった頬はなかなか戻ってくれない。
どうしてあんなことしたの?
ねぇ、どんなこと思っていたの?
聞きたいことは山ほどあるのに。
彼…雅弥くんに言う言葉は全然違うの。
そして、溜め息を一つついて見上げるもの。
『3月14日 ホワイトデー』
それは今週末に控えているイベントだった。
「チョコ…もらったし、何かした方が、いいよね」
そう思っていても、上手く考えがまとまらない。
それは全て、
チョコ味のキスのせいだ。
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