「な、何って、えっと、それはだな…」
挙動不審という言葉が似合う行動を取る蓮さん。
「あ、もしかして誰かとデートですか?」
そんな蓮さんに私は少しいじわるを言ってみた。
なのに…
なんだろう、なんかもやもやする。
そんな私を余所に、蓮さんは少し大きな声で慌てて答えた。
「そ、そんなわけあるか!お前の家庭教師を断ってまで誰とデートするというのだ」
「じゃあ、何してるんですか?」
「そんなの、明日の予習に決まって…あっ」
「…予習?」
しまったと言わんばかりに手で口を塞いだ蓮さん。
予習?明日?
明日、明日はホワイト…デー。
「ホワイトデーの予習?」
「うっ…」
「なんでですか?」
「それは、奏…お前とデートするために決まってるだろ」
「…はい!?」
半分降参と言ったような顔をした蓮さんは、聞いても無いことをぺらぺらと話し始めた。
「バレンタインチョコのお礼を、と思ってな。どうしようとか何にしようとか色々考えたんだが。全然決まらず今日まで来てしまったのだ。そこで、以前お前が好きだと言っていたお店などを回ったりしてみようかと思ったんだ。普通…と言えば普通なんだが。好きなところを回るのは、楽しいかと思ってな」
その口調はだんだんといつもの蓮さんに戻っていく。
「しかし、いざそうしようと思っても場所がわからなかったら意味がないと思ってな。そこで、場所を調べて実際にデートコースを歩いてみようと思ったのだ。どうだ、素晴らしいだろう?用意が良いというか」
「…はぁ」
いつもの通り、髪をかきあげ淡々と話を続けていく。
さっきまでの挙動不審さはどこへ行ったやら。
でも、なんだろう。すごく、居心地良い。
「折角だからと、いつもとは違った格好でデートらしくしてみたのだ。そうしたら、お前に会ったと。そういうことだな」
「そうだったんですか」
「それより、お前こそどうしたんだ?」
「え?あ、私は…そう、ウィンドウショッピング中です」
まさか、明日のためのプレゼントを買いに来ましたなんて言えません。
「そうかそうか」
なんで、この人はいつも嬉しそうな顔をするんだろう。
私は蓮さんの笑顔を見ながら、そう思うのだった。
「ん?なんか嬉しそうな顔だな」
「どっちがですか」
「まぁ、でも俺は奏は笑っている顔の方が好きだな」
「な、何を急に言ってるんですか!」
「なんだ、褒めてるんだぞ」
それは、充分心臓に悪い言葉。
いつも太陽みたいにニコニコしてる蓮さんこそ、笑ってるほうが似合います。
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