折角出かけるのだからと、誰に会うわけでもないのにお気に入りのスカートをはいて出てきた街中。
少しだけ賑わいを見せるそこを1人で歩くのは、別に寂しいことではなかったのだけれど。
なんか物足りない感じがして、心のどこかで居心地の悪さを感じていた。
「どこ、行こうかな」
何より、何も考えずに出てきてしまったため、ホワイトデーのお返しを何にしようかなどということも勿論決まっていなかった。
「蓮さんに似合うもの…似合うもの?ていうか、いつも使うようなものの方が良いのかな」
小さな小さな独り言を呟きながら歩く私は、それはそれは不審に見えるんだろうな。
ぐるぐると考えながら歩く道。
時々、声を掛けてくる知らない男の人たちを少しだけうざったく思いながら、歩いていた。
どうしてこんなに声を掛けてくる人がいるんだろう。
人がこんなに真剣に考えてる最中だと言うのに!
「そうだ。ネクタイとか良いかも」
我ながら、良いアイディアだと思った。
蓮さんはスーツを着ていることが多い。それは仕事柄ということもあるのだろうけれど。
「ネクタイなら、使いやすいだろうし。よし、きーめた」
決まったことに気分を良くしながら、私は歩を進める。
この時、私は何も気にしていなかった。
今日、家を出てきてから
私は蓮さんのことばかり考えてるってこと。
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