今日のデートの目的地を…私は未だに知らない。
 どこへ行くのか瞬くんに尋ねたら、「内緒」と一言だけ告げられた。
 それはどこか悪戯っぽい笑みで。私はそんな瞬くんの表情をまだ知らなかったから、それだけで大きく心臓が跳ねた。

 神様。今日私は、何度ドキドキするんでしょうか?

 瞬くんと他愛ない話を交わしながら向かった先は最寄の駅。
 天気が良いからと歩いてやってきたのだけれど、こんなにも遠くに感じたのは車の生活に慣れてしまったからだろうか。
 今までは普通で当たり前だったことが、今では違うなんて。ちょっと変な気分。

「そういえば、電車に乗るのって…久しぶりかも」
「そうなの?」
「うん。最近は出掛ける時も車だったりしてたから…。瞬くんは?そうでもない感じだね」

 タタン…タタン…

 規則正しい音が続く中、交わす会話は思ったよりも小さな声で。
 私はその一言一言を落とさないように、しっかりと瞬くんの声を聞いていた。

「うん、僕はついこの間…乗ったんだ」
「お出掛けで?」
「そう、かな」

 それ以上、瞬くんは何も言わなかった。

 今日の行き先と…何か関係があるのかな?

 少しだけ気になったけれど、私はそれ以上は何も聞かなかった。
 何か…楽しみがなくなってしまいそうだったから。

「あ、この次の駅」
「え、わ、わかった」

 窓の外、景色が少し早いスピードで過ぎて行く。
 隣にいる瞬くんもそれを見ているようで。
 ちらりと見つめたその横顔がこちらを向くことがなかった。


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