『いらっしゃいませ〜』
ショーウィンドウにはキラキラ光るケーキ達。
どのケーキも本当においしそうで迷ってしまう。
「どれがいいかなぁ。このベリーのタルトもおいしそうだし〜。あっ!こっちのシフォンも捨てがたいな・・・」
あれこれ迷っている私の横で、裕次お兄ちゃんがにっこり笑う。
「ねぇ、じゃぁこれ全部1個ずつ買ってさ、御堂さんにお茶入れてもらって食べようか?」
「ぜっ全部!?いくらなんでも二人でこの量は・・・」
「違うよ〜。夕食の後にみんなで食べようかなってね。ほら、そうしたら色々味見できるでしょ?」
そうだよね〜さすがに二人じゃ食べきれないよね。
お店の人にオーダーして待っている間に、カウンターだけの喫茶スペースで裕次お兄ちゃんと並んでお茶を飲む。ふわりとした空気が二人の間に流れる。
私は紅茶を一口飲むと、ふぅっと息をついた。
「奏ちゃん、どうしたの?疲れちゃった?」
心配そうに私の顔を覗き込んでくるお兄ちゃんに、私は笑顔を向けた。
「ううん、違うの。なんかこういう時間もいいなぁって思ってさ。裕次お兄ちゃんと二人で、こうやって並んでお茶をするのって初めてじゃない?」
「そうだね。家では一緒にお茶を飲んだりするけど、外って初めてかもね。」
『お客様、お待たせいたしました。』
私達はケーキの箱を受け取ると、二人ゆっくり歩きながら屋敷へと向かっていった。
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