青い鳥はこの手の中
君が好きだと言った話。
僕が前よりも好きになったって知ってる?
*****+*****+*****
「雅季くん!」
廊下を歩いていたら、急に呼び止められた。
この声は、すぐにわかる。だって、一番大好きな人の声だから。
「どうしたの?奏」
自分でも思う。前よりもきっと壁がないってこと。
人と話していて、柔らかくなったなって感じたりする。
誰のおかげかって、それはもちろん。
目の前にいる彼女のおかげ。
「あのね、えーっと…」
少しだけ上目遣いでもじもじしながら言う。
「勉強?宿題でわからないところがあったんでしょう?」
何が言いたいかなんて、すぐにわかるよ。
だって、君のことだから。
「ごめん!数学でどうしてもわからない問題があるの…!」
両手を合わせてお願いするポーズ。その1つ1つが愛しく感じる。
ねえ、君はわかってる?
僕がどれだけ、君のこと好きなのかってこと。
「いいよ。教えてあげるよ」
ふっと笑いながら答えると、彼女はぱっと顔を明るくして嬉しそうに笑う。
「本当に!ありがとう!後で宿題持って雅季くんの部屋に行くね」
そんな彼女を見ていると、少しだけいじわるをしたくなったりする。
なんなんだろ、この感情。
「奏、男の部屋に来るってどういう意味か、わかってる?」
「…え!?」
一気に奏の顔が真っ赤になる。そんな反応が面白くてつい笑う。
本当に彼女は素直だ。
「あははは。冗談だよ、宿題持っておいで」
彼女の頭をそっと撫でると、少しだけ口を尖らせた。でも、すぐに笑顔に戻ると「宿題持ってくる」と言って部屋へと戻っていった。
優しくしたいのに。
ただ、愛していたいだけなのに。
時々、君を壊してしまうくらいに抱きしめたくなる。
僕は本当に、少し変わったんだろうな。
一つ行き場のない溜め息をついてから、のんびりと部屋へと戻ることにした。
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