うたた寝は君の肩で


 ――僕は結構雨の日も好きなんだけれど。

 なんでそう思ったかって?
 それは君がこう叫んでいるからだよ。
「雨の日って憂鬱ー!」
 ごろんと無防備に…座っていたベッドに転がる奏。…ちなみに僕の部屋。
「そんなこと言っても…仕方ないよ。雨は自然のことなんだから」
 目線は読んでいた本に落としたまま。寝転がっている奏の隣に、平然そうに座っている自分。
 …実際は平気じゃないんだけれど。
「でもね、雅季くん」
「何?」
 そんなことを思っていると、彼女がガバッと勢いよく起き上がる。
「雨の日にね、こうやって二人で過ごしているのだって勿論楽しいんだよ?楽しいけれどね?」
「楽しいなら、いいじゃない」
 ちょっと素気なく返事をしてみる。少しむくれた顔が隣にあった。
 彼女は素直に色々な表情を僕に見せてくれる。僕はそんな奏が大好きだった。だから、そんなむくれた姿でさえ、愛おしく感じてる。
 まあ、そんなこと。…絶対に奏には言わないけれど。
「良くないの!」
 そう言うと、彼女は僕の読んでいた本をバッと取り上げる。
「だって、雨の日は…雅季くん本ばっかり読んでるんだもん」
「もう少しでキリが良かったのに…」
「雅季くん!」
 そして勢いよく本を閉じる奏。
 さすがに自分も悪かったなぁと思う。


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