【Side 奏】

 夢の中で、私は王子様に出会った。


 ふわりとキスをして、あっという間に私から奪っていったの。

「俺が、もらうね」

 軽い眩暈を覚える。眩しいくらいの笑顔だったから。

「でも…それじゃあ…」
「大丈夫!奏ちゃんのだもん」

 また一つキスを落とす。
 今度は抱き締められながら。

「本当に?」
「本当に」

 ウインクをして微笑み掛ける、その姿は本当に眩しくて。

「さ、おいでよ」

 すっと差し伸べられた手に、私は迷わず手を伸ばした。

「もう、離さないから」

 その言葉に私は大きく頷く。


 そして、今…―


「…あ」

 うっすら目を開けると、すぐ近くで頬をくすぐる金色の髪。

「裕次…お兄ちゃん」

 その方向に目を向けると寝息を立てている裕次お兄ちゃんの姿があった。

「いけない。これじゃあ、裕次お兄ちゃんが……あれ?」

 起き上がろうとした時に気づいたこと。
 それは…

「手、繋いだままいてくれたんだ…」

 ぎゅっと強く握られた掌。
 その心地良い熱に…もう少し触れていたい。

 そう思った。

「ありがとう、裕次…」

 近くにあったブランケットをぎこちなく片手で彼の肩に掛けると、私はまた枕に顔を埋めた。

 それは、彼の寝顔のすぐ近く。

「おやすみなさい」

 また、まどろみが襲ってくる。

 どうか、また夢で彼に会えますように。


―Fin―

→あとがき


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