「我侭?何?なんでも言ってよ。俺、奏ちゃんの我侭ならなんでも聞いちゃうから!」

 金色の髪を梳いた熱い掌をぎゅっと握り締めて、彼女の瞳をじっと見つめる。
 彼女は少しだけ恥ずかしそうに笑うと、ゆっくりと言葉を続けた。

「こう、してて?」
「こう?」
「そ。手、繋いでて」

 その言葉と共にぎゅっと俺の手を握る。

「それ…だけ?」
「うん」
「それだけで良いの?」
「それが良いの」
「手、繋いでるだけで?」
「うん。なんかね、安心するから」
「安心?」
「そう」

 早口で質問を返す俺にゆっくりと返事をする彼女。
 それはどこかちぐはぐなのに、まるでパズルのピースが合ったようにぴったりで。

「ふふっ。裕次お兄ちゃんの手、気持ち良いね」

 ふわふわと笑う彼女の目はどこかまどろみを帯びてきていた。

「ずっと、こうしてるから。ゆっくり…休んで?奏ちゃん」

「うん…ありがとう」

 そう言うと彼女は静かに目を閉じた。
 そして、少しして聞こえてきた寝息。

 この掌から、彼女を苦しめてる辛いものが全部全部抜けて行けば良い。
 そうしたら、俺が全部引き受けるよ。
 だけれど、きっと君は「嫌だ」と言うだろうから、
 そうしたら、半分だけ俺に頂戴?
 半分こしたら、辛いものも楽になるでしょう?

「おやすみ。奏」

 そして、夢へと旅立った彼女の瞳にキスをした。

 この手の温もりは、もう少しそのままで。


 それは、俺が…手を繋いでいたいからなんだ。


 君の事が、大事。だからね。




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