みんなは大袈裟だと言うけれど、俺にとっては一大事!

「奏ちゃん!大丈夫!?」
「…あ、裕次お兄ちゃん…」

 ノックもそこそこに彼女の部屋のドアを開けると、そこにはくすくすと笑う彼女と…要さんの姿。

「裕次様、もう少しお静かになさらないと…」
「…あ、ご、ごめん!」
「ふふっ。でも裕次お兄ちゃんらしいよね」

 そう言うと二人はまた静かに笑う。
 そんな様子にカーッと顔が赤くなるのがすぐにわかった。

「それと…お嬢様の熱はだいぶ落ち着いてきていますから。大丈夫ですよ」

 要さんがにっこりと笑いながらそう言う。

 そう、彼女は風邪を引いたらしいのだ。

 こういう時に限って俺は用事があって出掛けていて。
 帰ってくるなり、雅弥にのん気な声で

『あ、裕兄。奏のやつ、風邪ひいたらしいぜ?しかも結構高熱』

 なんて言うもんだから。
 俺、思い切り慌てちゃったよ。

 大好きな奏ちゃんが!って思ったら、気が気じゃなかったんだ。

「そ、そっか…それなら良かった…」
「裕次お兄ちゃんったら、大袈裟だよ。ほら、服もよれよれ…」
「え?あ、ほ、本当だ」

 そう言って自分で襟を正す。
 いつもなら…彼女がこれを直してくれるはずだった。
 でも、今日の彼女には無理な話で。
 そんな些細なことが無いだけなのに、どこか胸の奥がきゅっとなった。

「高熱だって聞いたけれど…大丈夫なの?」

 少し熱っぽい呼吸を続ける彼女の傍にそっと近づく。
 要さんは一礼すると薬袋を持って部屋を後にした。


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