もう…何日経つだろう。
 最近は本当にお互い忙しいせいか、彼女とすれ違う日々ばかりで。

「こんなはずじゃなかったのに!」

 思わず漏れた愚痴は誰にも届かず、自身と一緒にベッドに沈んだ。
 いつか見た彼女…奏の顔は笑っていたけれどどこか切なげで、『寂しい』という気持ちがすぐに伝わってきた。
 それでも、抱き締めることすら出来ない自分があまりに歯痒くて。

 そして、何より情けない。

「…寂しいな」

 自分もどこかに隠していたその言葉をそっと口にしてみると、あっという間にその感情は身体を巡っていって。
 何かが足りないような…そんな寂しさに駆られ、胸が苦しくなった。
 そんな中でも、頭はどこかまどろんでいて。いつ寝てしまってもおかしくないほど身体は疲れていた。

「メールだけでも、してから寝よう」

 彼女の部屋へと走っていきたい、その気持ちをどこかで抑えながら。
 少し冷たい指先でメールを打つのだった。

 …結局、そのメールは届くことはなかったのだけれど。


 次の日の朝。携帯画面を見て愕然とする。
 送信ボタンを押せば、すぐに彼女の元へと行くはずのメールがまだ画面に残っていたからだ。
「…何やってんだろ、俺」
 少し寝癖のついたその髪をわしゃわしゃと掻くと、近くに置いてあった時計を手にする。
 時間はもう8時を過ぎていて、一瞬焦ったのだけれど…よく考えたら休日だったことに気が付いた。

 今日はせっかく休みなのに…。

 無機質な文字が羅列している携帯画面をボーッと眺めながらそんなことを考えていた。
 確か、奏は予定が入っていると言っていた。そんなことを思い出しながら。


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