結局。
 私は蓮さんのお誘いを受けることにした。
 あれだけ嬉しそうに誘ってきた手前…なんだか断るには申し訳なかったから。
 そして、蓮さんは了解の返事をしたら、とても嬉しそうな顔をして喜んでいた。
 そんな顔を見たら、心のどこか奥がきゅっとなって…すごく嬉しく感じた。

 そして、その週の日曜日。
 家まで迎えに来てくれた蓮さんに連れられ…やってきたのは大きなショッピングモールだった。
「うわぁ…!すごく広い!ここ、一度来てみたかったんです」
 そこは一度は行ってみたかった場所で。思わず声を上げた私を、蓮さんはとても嬉しそうに見ていた。
「そうだろう、そうだろう。そう思って、奏をここに連れてきたんだからな」
「え?」
「この間、学校でここの話をしていただろう?クラスメイトと」
「あ、そういえば…」
 それはつい先日のこと。
 クラスメイトの仲の良い友だちがこのショッピングモールに行ったと言っていて…その話を休み時間にしていたのだ。
 その話しぶりについつい友だちと声をあげてしまったりして。

 そういえば、その時…次の授業って蓮さんの担当授業だったな…。

 そんなささいなことを聞いて覚えていたなんて。
 私はそれだけでも胸が一杯だった。

「ほら、行くぞ。ここは広いからな。どんどん回らないと日が暮れてしまう!」
 そう言って長い脚でずんずんと歩いていく蓮さんは、なんだか私よりもわくわくした顔をしていた。
「ま、待って下さいよ!ほら、マップマップ!」
 そして私は、ショッピングモールの案内マップを手に蓮さんを追いかけるのだった。


 そこは、本当に広くて。
 下手をすれば迷子になってしまうんじゃないかというほどだった。
 それは、広さだけのせいじゃなくて…きっと蓮さんがあちこち移動したりしていたからかもしれない。

「蓮さん!待って下さいよ」
「ほら、奏!あっちに雑貨屋があるぞ。お前が好きそうな場所じゃないか」
「もう!はしゃぎすぎですってば!」

 私から案内マップを奪い取った蓮さんの表情は子どもそのもの。
 それもまたこの人の良さなのかもしれないけれど…もう少し落ち着いてもいいんじゃないんだろうか。
「ふふっ…」
 そう思ったらなんだか笑いがこみ上げてきて。
 蓮さんの綺麗な横顔を見ながら笑ってしまった。
「うん?どうかしたか?何かついてるか?」
「いえ、何でもないです。ほら、着きましたよ?」


|

「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -