「あ、おかえりなさい」
「ただいま……って、え?奏さん?」
部屋のドアを開けて、気付いたこと…。
部屋に電気がついていたこと。
椅子にちょこんと座っている…愛しい人がいること。
「えへへ。待ちくたびれそうだった」
「どうして、ここに?」
頭の中でまだ理解できずにいるのに、彼女の顔はそんなのお構い無しといった感じ。
ふわりと軽い足取りで立ち上がると、そのまま自分の胸の中へと飛び込んできた。
背中に回された手に少しだけ力が入ると、一層深く顔が埋まる。
「なんか…すごく会いたくなったから」
服のせいでか、くぐもった声で言った彼女は少しだけ赤い顔をしていた。
そして、自分の顔もまた少しだけ赤くなる。
「そんなこと言われると…堪らなくなります」
彼女の髪にそっとキスを落としてから、同じようにぎゅっと抱き締める。
鼻を擽る香りは、大好きな彼女の香りと…おそらくシャンプーの匂い。
「あれ、奏さん…シャンプー変えました?」
すっと身体を離して彼女を見ながら聞いてみる。
「すごい!修一お兄ちゃん、よくわかったね?」
「それは…、いつも奏触れてますからね。…それより、今はお兄ちゃんじゃないよ?」
「あ、そうだった…」
しまったと言った顔をして口許に当てる小さな手。
「まだ…慣れないなぁ…」
「ふふ、それも仕方ないけど…お仕置き」
そう言ってその手を取り口づけて…その後、彼女の桜色に染まっている頬に、そして唇にそっとキスをした。
「お仕置きになってないよ?」
「そう、かな?」
「うん」
くすくすと笑うと下がる眉尻。少し細くなった瞳に長い睫毛がより彼女の瞳を綺麗に見せた。きゅっと上がる口角に、さらに頬を染める桜色。
時々…、いや最近はしゅっちゅう心配になる恋人。
女性は恋をすると綺麗になるとよく聞くが、本当なんだなと彼女を見ているとよく感じる。
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