「それで、今日はどこにデートに行くの?」
「えっとね。奏ちゃんがしたいと思ってた放課後デートがしたい!」
「え、えぇ!?」

 私任せだったのか!

 急に言われたため、私はどうしようかと考えた。

 私がしたいと思ったこと…?あんまり考えたことないよぉ…。
 恋人だって…いなかったし。

「うーん、それじゃあ…放課後デートって感じじゃないかもしれないけれど。よく友だちと行った場所みたいな所でも…いいかな?」
「うん!大歓迎!」

 裕次お兄ちゃんは満面の笑みで答えてくれた。

 そして、デートは始まった。

 私は前の学校にいた頃、放課後に友だちとよく行った場所へ行った。
 裕次お兄ちゃんを案内するような形で。
 大好きな雑貨屋さんで小物を見たり、よく友だちと食べたクレープを半分こしたり。あと、カラオケにも少しの時間だけ行った。お兄ちゃんの歌は相変わらずだったけれど、ね。

「あとね!いつもここでプリクラ撮ったりしたんだよ」
「プリクラ?」
「撮ってく?」
「…うん!」

 そして、プリクラを撮っていくことになった。
 私はすごく楽しかった。久しぶりにこんな放課後を過ごしていたから。

「奏ちゃん?」
「何?あ、つ、色々連れ回し過ぎちゃったかな?ごめんね?裕次お兄ちゃん…楽しい?」

 急に心配になって裕次お兄ちゃんを見つめた。裕次お兄ちゃんは笑いながら首を横に振る。

「ううん、すごく楽しいよ。それに、奏ちゃんがすごく楽しそうだ」

 そう言う裕次お兄ちゃんの顔は嬉しそうだった。

「うん、久しぶりだったから。すごく楽しくって。裕次お兄ちゃん、ありがとう」
「ううん。俺も知らない奏ちゃんが見れてすごく楽しいから」

 じっと見つめられる。その目に私は弱い。…すぐに顔が赤くなってしまう。

「あ、ほ、ほら。順番だよ!」

 そう言って赤くなった顔を誤魔化しながら、裕次お兄ちゃんの手を取った。
 久しぶりのプリクラ。それが大好きな人と撮れる。
 なんだか私の心はさっきまでよりも嬉しくなっていた。

 と。

「奏」
「何?どうしたの?」

 画面を操作しながら答えた。

「ちょっと、こっち…向いて?」
「うん?…!」

 素直にその言葉に従うと、ふっと裕次お兄ちゃんの顔が目の前に来て…唇に軽くキスをされた。

「えへへ。もーらい」

 裕次お兄ちゃんは満足そうに笑って言った。
 私はだんだんと理解していって…急にかーっと顔が赤くなった。

「ゆ、裕次お兄ちゃ…!」
「だって、ここなら見えないでしょう?奏があまりにも可愛かったから」

 私の顔はきっと真っ赤だ。だって、すごく熱かったから…。

「ねえ?」
「え?」
「もう一度…キスしていい?」

 裕次お兄ちゃんは私の顔を覗き込みながら言う。
 私は答えられなくて、言葉の代わりに一つだけ小さく頷いた。

 そして、今度はさっきよりも甘くて…深いキスが降ってきた…。

 その後。
 プリクラの私の顔が真っ赤だったのは、言うまでもないことだった。


―Fin―

→あとがき


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