赤い花はそっと胸で咲く
それは、ある日の昼下がりのことだった…。
クラスメイトに指摘されたそれは、私を動転させるに充分な内容で、誤魔化すのに必死になったことは言うまでもない。
「あれ?今気づいたんだけれど…奏ちゃん、首元どうしたの?蚊に刺され?」
「え?首?」
指さされた場所を持っていた手鏡でチェックする。そこには赤い痕があった。
…!?こ、これって…!
バッと思わず手で隠してしまう。その行動を不思議に思った友人…。
「どうしたの?」
「い、いや、全然気づかなかったんだけれど、気づいちゃったら急に痒くなってきちゃって…あははは」
そして、わざとらしくその場所を掻く。「あぁ、そっかぁ」と友人はそれ以上聞いて来なかった。そのことにホッと息をつく。
これは勿論、蚊に刺されなんかじゃない。
一体いつつけられたんだろ!?
絶対に「あの人」が付けたキスマーク…!!
とりあえず、こんなところに絆創膏なんて貼ったら確実に怪しまれてしまう。
そう考えた私は、その場所が見えないように髪で隠してみた。
それでも少し見えてしまうその場所は、なんだか気になって仕方ない。
仕方ない…蚊に刺されってことにしておこう…。
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