放課後、どうしようもない気持ちを抱えたまま、資料も一緒に抱えて歩く夕暮れの廊下。
 …生徒会の仕事じゃないのに。部活に行こうとしてたのに。
 こういう時に運悪く掴まってしまう俺。そういう人。

「もう…帰っちゃったかなぁ、奏ちゃん」

 時々、グラウンドで雅弥を待っていたり、図書室で雅季を待っていたり。
 彼らと一緒に帰ったりするからなんだけれど、それだけでも充分羨ましいぞ、双子のお二人さん。
 だけれど、そのおかげで俺も彼女に会えるんだけれど…。
 部活の時なんて特にありがたい。
 だって、そこを見れば彼女が立ってるんだから。

「やっと着いたよ、資料室…」

 溜め息一つついてから気づいたこと。
 …ドアを開けるのが困難。

「全く、一度にこんなに持つんじゃなかった」

 だけれど、往復するのも面倒で。
 このままだと思い切り荷物を落としそう。
 そんな時、運良くガラッとドアが開いた。

 あ、ラッキー…

「わっ!」
「え!?わ、わぁ!ごめん!」

 ラッキーなんて思ったのもつかの間。ドアの開いた先に居たその人にぶつかりそうになったのだ。
 ぐらつく資料。だけれどセーフ。

「ご、ごめん!大丈夫だった?」

 パッとその顔を見て、思わず綻んだ自分の緩い頬。

「大丈夫です…って、あ、巧くん!」

 そうです。目の前に居たのは彼女なんです。

「巧くんも資料を片付けに?」
「そうそう。あれ?奏ちゃんも?」
「うん、ウチでも使ったの。片付け頼まれちゃって」

 神様、ありがとう!素敵な奇跡です!

「って、ごめんね!すぐに道あけるから」

 慌てる彼女の優しさに、たまらなく頬を緩ませた俺を許してください。
 だけれど、嬉しくてたまらないんです。どうしようもないんです、これ。

 だってさ、今は俺と奏ちゃんだけだよ?
 雅弥だって雅季だって居ないんだ。
 こんな幸運、もうないかも!


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