【Side 奏】

 最近…なんか妙な違和感を感じる。
 それは、多分…

「奏さん、どうかしましたか?」
「あ、修一お兄ちゃん」

 廊下を歩いているとふいに声を掛けられた。
 その先には修一お兄ちゃん。

 …まず、1つの原因。

「う、ううん!なんでもないよ」

 本当はなんでもあるの。
 あのね、本当は私が聞きたいんだ。

 修一お兄ちゃん、どうかした?

「そうですか、それなら良いのですが」

 ほっと息を着いて安心したように見せるその笑顔はいつもとなんら変わらない。
 そう、この時は。
 ただ…この笑顔が変わるときがあるんだ。

「そういえば、宿題は終わりましたか?」
「あ、まだあと1つ残ってるんだった。英語のだけ」
「そうでしたか…それでは…」

「奏様」

 修一お兄ちゃんが何かを言い出そうとしたその時。

 一瞬、笑顔が固まった気がした。

「御堂さん。どうしました?」

 修一お兄ちゃんの少し後方。いつもの優しい笑みを湛えた御堂さんが歩いてきた。

「先日お嬢様が頼まれました品物が届きましたので、ご報告に」
「そうだったんですか!やった」

 私は笑ってそう答えると、御堂さんもまた笑顔を返してくれる。

「…」

 そのすぐ横で修一お兄ちゃんがいつもはあまり見せないであろう表情を見せているとは知らずに。

「あ、そうだ。修一お兄ちゃん、ごめんね、お話途中だったよね」

 私が話を戻すと、修一お兄ちゃんははっとしていつもの笑顔に戻る。

「…いえ、なんでもありません。宿題、頑張ってください」

 ふわりとしたその笑顔はいつも通り。

 あれ?今度は御堂さんの表情が曇った?

「何かわからないことがあったら、いつでも聞いてくださいね」
「ありがとう!修一お兄ちゃん」

 そんな会話を軽く交わす。すると、

「お嬢様、休憩なさるときはいつでもおっしゃってくださいね。すぐに紅茶のご用意を致しますから」
「わぁ!ありがとう!御堂さん」

 今度は御堂さんが声を掛けてくる。


 …そう、そうだ!これこれ。これだよ!

 妙な違和感!


「あの…」
「「はい?」」

 私が話しを切り出すと二人が一斉に返事をした。

「…二人とも、何かありました?」
「え?」
「…は?」
「い、いえ!私の気のせいかもしれないんで!あの、き、気にしないで下さい!」

 二人の目は目を丸くしてこちらを見る。
 それは不思議がっているというよりは…驚いているような感じだ。

 なんでだろう。私は何か地雷を踏んでしまったような気分になった。

「あ!わ、私、宿題やってくるんで!あの、お、おやすみなさい!」

 そして、脱兎の如く走っていったのだった。

 あの場に居るのが…なんとなく怖かったから。


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