【Side 裕次】

 違和感に気づいたのは…今週の初め頃だった。

 俺は朝食時、いつも通りと言えばいつも通りだけれど…何気なく、奏ちゃんに抱きついたんだ。

「おはよう!奏ちゃん。今日も可愛いね!」
「ゆ、裕次お兄ちゃん!恥ずかしいよ!」

 それはいつも通りのスキンシップだったはずだ。

 それなのに…。

 …ゾクッ

「うん?どうかした?裕次お兄ちゃん」
「え?え、あ…な、なんでもないよ!」

 突如感じた冷たい視線。
 いや、睨まれているにも近いこの感覚。
 鳥肌が立つほど背筋に寒気を感じた。

 視線は、おそらく1つではない。
 2つだ。

「…裕兄ちゃん?」
「あ、瞬くん!おはよう」
「…何かあった?なんか変だよ?」

 急に掛けられた声にびくりとしながらも、小首を傾げた可愛い弟に挨拶をする。

 その少し後方では、淡々と珈琲を飲む修一兄さんと…近くで兄弟たちの食事の準備をしている要さん。

 …あれ?あっちから感じた気がしたのに。

「裕兄ちゃん」
「何?瞬くん」
「…気をつけたほうが、いいと思うよ?」
「え!?ど、どういうこと?」

 少しだけ小声で弟と話をする姿は、それはそれは朝の景色には似合わなかっただろう。

「…裕次兄さん、気づいてなかったの?」
「へ?」

 そんな様子に違和感なく話に入ってきたのは雅季だった。
 彼もまた少し声のトーンを落として話をする。

「修一兄さんと要さんの異変」
「い、異変?」
「先週あたりからじゃない?雅季兄ちゃん」
「やっぱ瞬は気づいてたか。そうだな、そのくらいだったと思う」
「へ?な、何?何?」

 彼らとは少し離れた場所で話をする。
 修一兄さんの近くでは、先程抱きついた彼女が朝食を食べるところだった。
 彼らの要さんは傍で紅茶を淹れている。

「喧嘩って感じではないよね?」
「そうだね。ただ、若干ぎくしゃくしてる」
「…そ、そうなの?」

 半分、二人においていかれながらも話についていく。

「でも、原因は…」
「そう、だな」
「え?何!?原因、わかってるの?」
「…裕兄ちゃん、わからないの?」

 少し冷めているとも取れる弟たちの視線を感じながら、俺は質問した。

「…何?」
 
 すると、二人は一斉に小さく指差した。

「…ん」

 その先に居たのは、

 奏ちゃんだったのだ。


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