言葉の代わりに、吐息と熱が耳に触れる。
あとどれくらい、こうしていれば…満足するのかな。
きっと、そんなもの…存在しないんだろうけれど。
どれだけ君を抱き締めても、足りないくらいだから。
途中、控えめなノックの音が聞こえてきて、廊下から小さな声で
「なんだ、寝ちまったのか」
って声が聞こえた。
きっと、柄にもなく会いに来たんだろう。
同じ日に生まれたアイツが。
…僕は『特別な誕生日』をもらったよ。
君には悪いけど、少しだけ優越感。
いつも2人で祝われた誕生日だけれど、今年は少し違ったんだ。
目の前に、愛しい人がいるからね。
「ねぇ」
「…うん?どうしたの?」
「今度、綺麗なカップケーキの見本を見せてあげるよ」
「…なんか、複雑」
「ふふっ。じゃあ、1月23日を楽しみにしてると良い」
「1月23日?なんで?」
「…君は、1月23日が何かわかってないわけ?呆れた」
「あ…そっか」
「わかったの?ていうか」
「何?」
「キスのし過ぎでボーッとしてる…だけ?」
「…!!」
そして、また塞ぐその紅の色。
もっともっと、何も考えられなくさせてあげる…ね?
―Fin―
→あとがき
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