「どうしてもね、最初に祝いたかったの。だけれど…」
「あの様子だと…ちょっとうたた寝しちゃいましたって感じ?」
「…う」
「君はわかりやすいね。奏」
「雅季くんがよくわかってるだけ…だよ?」
「そうかな」
「うん」

 彼女と一緒にベッドに腰掛けると、それに合わせて軋むスプリング。
 さっきまで自分が居た場所なのに、さっきよりも居心地良く感じるのはなんでだろう。

「そう!それでね。誕生日プレゼント持ってきたんだ」
「…誕生日プレゼント?」

 そう言うと、彼女はなにやら嬉しそうに持っていた包みを手渡してきた。
 その場であけてほしいと催促されたので丁寧にそのリボンを解くと、中から出てきたのはブックカバーとブックマーク。
 黒が基調のもので、センスの良い装飾が施されている。そして、どうやらおそろいのものみたいだ。

「色々考えたんだけれど、雅季くんらしいのって思ったら…やっぱりこれしか思いつかなくて」

 照れくさそうに言う彼女を見てから、もう一度プレゼントに視線を落とす。
 これを彼女があーでもないこーでもないと選んでいたのかと思うと、なんだかおかしかった。

「き、気に入らなかった?」

 おどおどと不安そうな声で聞いてきた彼女に、僕は何も答えずして返事をする。

 響いたのはリップ音。

「ま、雅季くん!?」
「何驚いてるの?」
「だ、だって!急に…」
「あまりに奏がしてほしそうな目で見てたから」
「そんなこと!」
「ないの?絶対に無いって言い切れる?」
「う…雅季くん…なんかいじわるじゃない?」
「いつもと変わらないよ」

 目を細めて笑い掛けると、彼女は少しだけ不満げな顔。
 だけれど、目は笑っていた。

「それとね?」
「何?」
「はい。これも」


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