「…はい?」

 夜中に誰だろう。
 そう思ってドアを静かに開ければ、立っていたのは彼女だった。

「奏?」

 格好は無防備にも部屋着のまま。
 慌ててきたのか、少しだけ髪がボサボサしていて。それはそれで彼女らしいなと僕は思った。

「…い…ま…」
「え?」

 本当に慌ててきたんだろう。僕と彼女の部屋の距離なんて大したこと無いのに、少しだけ息を切らしていた。

「今、何時!?」
「な、何時って…えっと…」

 ちらっと部屋の時計に目をやると、ちょうど時計の針が0時をさしていたところだった。

「0時になったと…」
「誕生日おめでとう!」
「…は?」

 言い終わる前に彼女は満面の笑みで抱きついてきた。

 …ちょっと、部屋のドア…開いたままなんだけれど。

 そんなことを冷静に考えられるほど頭の中は落ち着いているのに、行動がそれに伴わない。

「とりあえず、中…入ったら?」
「わっ!そうだね!ごめんごめん!」

 慌てて顔を赤くする彼女を見て「まぁ、いいか」と呟く。
 その声は彼女には届かなかったのか、小さく首を傾げたので「なんでもない」と言い部屋のドアをパタンと閉めた。


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