続き 」『面倒だよ…クロコダイル、ジンベエ』 「殺せばいいんだ全員」 「困ったのう」 仕方が無いか… 『黙れ』 取り敢えず、言葉を発すると同時に微量の覇気を放つ。2、3人倒れたが別に大丈夫だろう。 『…私が何故様付けなんてされてるのかは私もよく分かっていない。昔からの知り合いが海軍本部の上層部に居るだけだが、恐らくその所為だろう。知っているだろうが、私自身は海賊でも犯罪者でも無い。 確かに“捜し人”として手配書が手回っているが、額が高いのは私の人脈があまりにも無節操に海軍、海賊関係無くあるからだ』 「───そうか。そういや副船長のおっさんも名無の事知ってたな」 『副船長って…、レイリーの事かいルフィ?』 「おう!手配書眺めながら、今度は何時会いに来るんだって言ってたぞ」 「なぬーっ!!?てめェ…!!レイリーさんに会ったのか!?元気にしてたか!?…懐かしいぜェ〜〜〜〜〜!!副船長!!一体どこで…」 「“冥王”レイリーの名が出たァ〜〜〜〜〜〜〜!!すげェ会話だ!!!」 取り敢えず、すげェすげェと周りがうるさくなった。 その上、艦を奪うだの言い出した輩が出始めたのでもう一度黙れと言う。 『馬鹿共が…男なら下らねぇ事でうろたえてんな。この艦はもう止まらない、戦争のど真ん中へ向かっている。 この場で艦を奪ってどうするんだ?ルフィ達が居なければインペルダウンからも出られなかっただろうお前達が、どうやってこの“タライ海流”を抜けて脱出するんだよ』 ルフィ達が居なければ獄卒獣達にやられていただろう事を思い出したのか静かになった奴等に続ける。 『よく考えろ。今日起こる戦争で、海軍が勝っても、白ひげが勝っても、時代が変わる……!! どうせ変わるなら、お前ら男だろうが、手前の手で武器を取り、手前の足でその瞬間に立ち会い、その時代を変える人間の1人になって見せろ…!!!!』 「!!?」 ───ズザザザァ!! 「……名無様!!」 「………!!ウゥ…!!………!!名無様ァ〜〜〜!!」 「おれ達…地獄の闇に打ちのめされて…!!」 「いつの間にか…………!!大切なモン失っちまってたみてェだよ!!!」 「あの頃持ってた夢という名の“心の宝石”をよォ!!!」 「おれァついてくぜアンタに!!いえ、貴女様に!!」 「平穏な暮らしなんかいらねェ!!」 『(うわっ…面倒くせぇ)…勝手にしろ。但し、私についてくんな。ただ後を追うしか能の無い奴等は要らない。指示はバギーにしてもらえ』 「おれかよっ!!?」 ───ウ、ウオオオオオオオ!!!! 「なんだかまとまったぞ」 「名無君は人の上に立つ者の素質があるからのう…」 「頼むぜキャプテン・バギー!!アンタがおれらのリーダーだ!!」 「お、オウッ!!おれが指示を出す!!!」 (単純で良かった) 全部バギーに最終的には押し付けたが上手くいって良かった。 * * * 「緊張を解くな!!!何が起きてもあと3時間!!そこで全てが終わる!!! ───ぴくり。 …風が運んできた声に目を細める。 目の前にある“正義の門” ───さて、そろそろ動き出すとしよう。 『ルフィ』 「ん、なんだ?」 『私は先に行く。期を見計らってエースを助け出す。ルフィ、その時はお前も来い』 「分かった」 迷わず頷いたルフィの頭を優しく撫でる。 『ルフィ…これが終わったら皆で写真を撮ろう。エースとルフィと…皆で』 そう言い残し、私は印を組んでその場を後にした。 * * * 「いいなガープ…全て伝える」 「勝手にせい。わしゃ下におるぞ」 上空で、絶をしたまま処刑台のやり取りを眺める。透明になる呪文も唱えてあるので見つかりはしない。 今は、エースの出生を話す場面のようだ。 「諸君らに話しておく事がある。ポートガス・D・エース…この男が今日ここで死ぬ事の大きな意味についてだ………!!」 『…死なないよ』 そんな思わず漏らした一言は誰にも聞こえなかったようだ。 「エース。お前の父親の名を言ってみろ!!」 「!……………………!!おれの親父は“白ひげ”だ!!」 「違う!!!」 「違わねェ!!白ひげだけだ!!!他にはいねェ!!!」 (エース…) 彼が、ロジャーを否定する気持ちが分からない訳じゃない。 …でも、悲しい事だ。 ロジャーはちゃんとエースを愛してた。 “あの時”の言葉だって、大海賊時代の幕開けの為にでは無く、エースの為に遺した言葉なんだ…! 自分の知らない父親を知りたいと思う貴方の幼い頃の心が、無為にされてきた事は知っている。 私達のように、彼とちゃんと関わった事が無い者達から見れば彼はただの大犯罪者。 そんな彼を周囲がどう思うかなんて決まっている。 ……エース…。貴方の父親は、悪い事なんてして無いよ。ただ、自由に生きたんだ。 海賊として、自由に… 「当時 我々は目を皿にして必死に探したのだ。ある島にあの男の子供がいるかも知れない。 “CP(サイファーポール)”の微かな情報とその可能性だけを頼りに、生まれたての子供、生まれて来る子供、そして母親達を隈なく調べたが見つからない」 「───それもそのハズ…お前の出生には母親が命を懸けた、母の意地ともいえるトリックがあったのだ………!! ───それは我々の目を………いや…世界の目を欺いた!! “南の海(サウスブルー)”にバテリアという島がある。母親の名はポートガス・D・ルージュ。 女は我々の頭にある常識を遙かに越えて、子を想う一心で実に20か月もの間、子を腹に宿していたのだ!! そしてお前を産むと同時に力尽き果て、その場で命を落とした」 (ルージュ…) 「名無!見て、あの人との子供が出来たの!!」 『え……本当に?!おめでとう、ルージュ!!』 「まだよ、まだ生まれてきてはダメ…」 『ルージュ…』 ───オギャー 「………女の子なら「アン」男の子なら………「エース」………彼がそう決めてた… ───この子の名は…「ゴール・D・エース」───彼と私の子…」 「父親の死から一年と3か月を経て… 世界最大の悪の血を引いて生まれてきた子供、それがお前だ。 知らんわけではあるまい……!!」 「お前の父親は!!! “海賊王”ゴールド・ロジャーだ!!!!」 センゴクのその言葉は、世界を震撼させた。 「───2年前か………、お前が母親の名を名乗り…「スペードの海賊団」の船長として卓抜した力と速度でこの海を駆け上がっていった時… 我々はようやく気づいたのだ。…ロジャーの血が絶えていなかった事に!!」 次々とセンゴクは言葉を続けていった。 「───そして、放置すれば必ず海賊次世代の頂点に立つ資質を発揮し始める!!! だからこそ今日ここで お前の首を取る事には大きな意味がある!! たとえ“白ひげ”との全面戦争になろうともだ!!!」 私は、センゴクがそう言い切った瞬間、「正義の門」が誰の指示もなく開き始めた。 動力室に向かわせた影分身が上手くやってくれたようだ。 「“モビーディック号”が来たァ〜〜〜〜〜〜!!!!」 「グララララ…何十年ぶりだ?センゴク。 おれの愛する息子は無事なんだろうな………!!!!」 『お義父さん…』 「グラララララ……!!!ちょっと待ってな………エース!!!」 「オヤジィ!!!!」 ───戦争が始まる。 * * * 斬る音、殴打する音、裂く音、引き金を引く音、剣戟が交わり、剣花が飛ぶ。 それに続いて上がる悲鳴、怒号、咆哮、血飛沫が飛び散り、命の灯が消える音。 オーズが死んだ?まさか。まだ生きてる。まだ…ね。 そんな周囲を歯牙にも掛けず、笑い続ける不愉快なドピンク。消えれば良い。むしろ滅されろ。 「海賊が悪!!? 海軍が正義!!? そんなものはいくらでも塗り替えられて来た…!!!」 騒がしいピンクだ。そんな分かりきった事を何故この状況で言い出したのか。 眼下で起きている戦争を私ただ黙って見下ろす。呪文は解いたが、絶をしているからか誰も私に気付かない。 私は、ただ黙って期を待つ。 「“平和”を知らねェ子供共(ガキども)と、“戦争”を知らねェ子供共(ガキども)との価値観は違う!!!」 まだ言葉を続ける奴を見る。その不愉快な笑いがまるで新しい玩具を見つけた子供のようだ。お気に入りの玩具を壊してしまう子供のように。 「頂点に立つ者が善悪を塗り替える!!! 今、この場所こそ、中立だ!!! 正義は勝つって!? そりゃそうだろ。 勝者だけが正義だ!!!!」 負ければ死、勝てば生。単純明解な答え、Yes or No。それより簡単だ。 ここで勝てば白ひげを中心とした海賊達は正義。ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)を求める全世界の海賊達にとって、“英雄”となる。 そして、負ければ死あるのみ。 ああ、知ってるよ。海軍にも成さなきゃならない事があるんだろう。 妻がいる、子供がいる、家がある、帰りを待っている誰かがいる。 己の掲げる正義の為に、海軍達にも成さなきゃならない事があるんだろうさ。 それが真っ当しなきゃならない事だって私にも分かる。 …けどね?人間は勝手な生き物なんだ。自分が救われる道を捜す。 その為なら手段も何も選ばないくらい勝手なもんなんだ。 私は皆が大事だ。大切なんだ。皆と笑い合って共に在りたいんだよ。 だけど皆が属するは海賊、ならば皆が救われる道はただ一つ。 『エースの処刑を止める』 たとえ、海軍の中の一握りの大切な存在を傷付けることになったとしても、私は海賊(かれら)と共に在りたい。 “Might is right(力は正義である)”って言うだろ? 私は皆を救う訳じゃない。皆を失いたくない自身の心を守りたいんだ。結局は自分の為。 だけどそれでも構わない、皆さえ居れば良いんだ。 その為に、あなた達は邪魔なんだよ。だから─── 『負けてくれ』 [*前] | [次#] ページ: |