05




重たい足取りで学校へ向かう
教室に入るともうお隣さんは席に座っていた
私に気付いたみたいで、お隣さんがこっちを見た
そして、目線は私の手元のお弁当袋へ…
何か言われるかとドキドキしたが、無言でただ見ているだけだった


「お、おはよう…」

「…おはようございますぅ〜」


気まずくなったので、取り敢えず挨拶すると向こうも挨拶を返してくれた


その後も、休み時間の度にドキドキしていたが、特にお隣さんは何もいってくることはなく、席に座っているだけだった


そして、お昼!
…になっても何も言ってこない
あれ?ひょっとしてただの冗談だった?
なんだ、ただからかわれただけかとガッカリしながら、お弁当を食べようとした時だった


「…ねぇ?それ、なんですかぁ?」

「ふぇ?!」

「…だからぁ、それですよぉそれ」

「えと、一応お弁当です…」

「そんなこと、見ればわかりますよぉ〜馬鹿にしてるんですかぁ?ねぇ?…おまえが作ったんですかぁ?」


あ、お弁当にちゃんと見えていたんだと、少しだけ感動した


「あーうん…そうだけど…」

「ふぅ〜ん…で、オレ様のは?」

「え?」

「だぁ〜かぁ〜らぁ〜オレ様のはぁ?おまえ、昨日わかったって言いましたよねぇ?ねぇってば、ねぇ?」

「!?」


あ、どうやら冗談ではなかったらしい
ちゃんと覚えてた!
それどころか執拗にお弁当を催促されているわけで


「えーっと、これがそのお弁当なんですけど…」

「はぁ〜?じゃあ、なんでおまえが食べようとしてるんですかぁ?」

「いや、失敗しちゃったから自分で食べようと」

「それ、オレ様のなんだよなぁ?いいからさぁ〜さっさと渡せよぉ」

「いやいやいやいや、こんなの食べたらお腹壊すってば!」


そ、そんなに食べたかったのかな…?
でも本当にこんなものを渡すわけにはいかない…
私が必死でやめた方がいいと話すが、それでも渡せと言ってくるので、負けじと私が渡すまいとしぶっていると


「…あぁ、もぉめんどくさいですねぇ…」

「あ!」


そう呟いたかと思うと、ひょいっと手づかみで卵焼きを一つ取られてしまい、そのまま口へ…まさか、そんな手でくるとは…!
って、それどころではない!


「っちょ!?お腹壊すって!ストップ!返して!お礼ならもっと他の方法でするからさ!ね!?だからストップ!!」

「うるっさいですねぇ〜」


そういいながら次々とお弁当箱から手づかみでおかずを奪っては食べていく
止めようも手を伸ばすがうまくかわされてしまう…くっ、少し悔しい…
そしてついにはお弁当箱は空になってしまった…


「…うっそ、全部食べちゃった」

「あぁん?オレ様のなんだからぁいいですよねぇ?文句あるのおまえぇ?」

「いや、文句はないけど…でも…」


空になったお弁当箱をもう一度見る
あんな料理だが全部食べてくれたのだ、嬉しくないわけがない
が、やっぱり不安は残るわけでして…


「あ、味…大丈夫だった?…」


一番の問題はこれだ…
答えはわかりきっているが、恐る恐る聞いてみる


「まぁ、オレ様が自分で作った方が美味いですねぇ〜」

「!?」


「でも、まぁ……もう少し上手くなったら、また食べてあげてもいいですよぉ?」


返ってきたのは予想とは全く違う言葉だった
取り敢えず、ご馳走さまでしたぁ〜
っと最後に言い残して、自分の席に何事もなかったかのように座った


かという私は、顔のニヤニヤが止まらなかった
あんな出来だ、直接不味いとは言わなかったが、きっと不味かっただろう
きっと自分から頼んだからにはという責任で食べてくれたのかもしれない
でも、それでも、空になったお弁当箱ともう一度食べてあげてもいい、その言葉だけで嬉しくて仕方がなかった


次はちゃんと美味しいと言ってもらえるものを食べてもらいたい
私はこれからも苦手な料理と戦うことを決めたのだった



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