02
春、それは新しい生活に夢を見た、木偶どもが騒ぎ出す季節
やれ、彼氏彼女だ友達だ騒いでいるが、キャッキャっとうるせぇ
オレ様にはどぉーでもいい話だぁ
何人か話しかけてきたやつもいたが、ちょっと睨んだだけで、怖いだの変なやつだのと簡単には離れていった…ふん、お前らみたいなぁ愚図でぇ弱い木偶やろうとつるむほど、オレ様は暇じゃないんですよぉ
めんどくせぇなぁ
サボってしまおうかとも思ったが、それはそれでバレたときに"あいつ"が黙っていないだろう
そっちの方がめんどくせぇ
それなら、まだこっちの方がましだぁ
ボーとあれこれ考えているうちにチャイムがなりHRが始まった
新学期にはお馴染みの自己紹介をやるらしい他のやつらは、名前とどぉでもいい趣味や好きなものを次々と言っていく
オレ様は「後藤又兵衛でぇす」と気だるそうに名前だけを言い席に座った
そういえば、オレ様の隣はインフルエンザに
かかって休みらしい
神田飛鳥ってやつでどうやら女のようだぁ
ケケケ、新学期早々ついてないやつだねぇ
そんなバカなやつがどんなやつか、ほぉんの少しだけだが興味がわいた
そいつがやってきたのはそれから一週間後だった
他の木偶どもと同じようにそれはウキウキした表情でやってきた
しょせんは他と変わらねぇ木偶野郎かと思ったが、しばらく周りをキョロキョロしたかと思えば机に突っ伏して頭を抱えていた
微かにだが「出遅れた」と聞こえた気がする
たまぁにチラッと横をみてみれば、考えていることが表情に出てしまうのか、コロコロと表情が変わり落ち着かないやつだぁ
周りから見れば変なやつに見えてもおかしくないだろうがぁ、神田飛鳥の席は角
わざわざこっちへ振り向きでもしない限りは教師とオレ様以外には見えていないだろう
そんな神田飛鳥がその日一番の青い顔をした
今度はなんだぁ?と思っていたら隣から視線…
…超見てやがる
神田飛鳥が俺様の方をじーっと見ていた
それも、まじまじと
一体なんだってんだぁ?
っつーか、見すぎじゃないですかぁ?ねぇ?
他の木偶どもと同じで、怖くてぇ、変なやつのぉ、隣で残念ってかぁ?
て考えてたらイライラしてきやがったので、こっち見んなと言う意味を込めて睨んでやろうと横を向けば、あいつと目があった
「あ、あの教科書を見せてくれみゃせんか!?」
っはぁ?
目があったかと思えば神田飛鳥が、こう言ってきた
しかも噛んでるしぃ、アホですかぁ?
ていうか
「…おまえ、教科書忘れたんですかぁ?」
固まっている神田飛鳥に聞き返してみると「はい」っと答えた
「登校してきたかと思えばぁ初っぱなから教科書忘れるとかバカですかぁ?バカなんですかぁ?ねぇ?」
バカだ、こいつ本物のバカだ
そう思ったら口から勝手に言葉が出ていた
かという神田飛鳥はというと、ガーン!っとでも効果音がつくような、明らかにショックを受けた顔をして机に突っ伏してしまっていた
本当にわかりやすいバカで変なやつだぁ
だからだろうか、ちょっとした気まぐれを起こしたのは
普段のオレ様なら絶対にそんな行動しないだろう
俺様は神田飛鳥に無言で教科書を突き付けてやった
こちらの異変に気付きこっちを見たが、案の定、状況がすぐ理解出来ていないのか、受けとる訳でもなくただ目を丸くして固まっていやがる
「見るんですかぁ?見ないんですかぁ?早くしてくださいよぉ」
「みみみ見ます!!」
痺れを切らしたオレ様の方から話しかけると
慌てて教科書を受けとりながら、ありがとうと言って問題を睨み付けながらやっていた
オレ様はしばらく、そんな姿を見ていたが当人は問題でそれどころじゃないから気付いていないでしょうねぇ
ペンが止まりホッとした表情を見る限り、無事に解き終わったようだぁ
その直後に答えを言うよう当てられていた
危なかったねぇ?
「あの、教科書スッゴク助かりました!ありがとうございました!」
と、そのあとすぐに神田飛鳥が教科書を返してきた
それは、もう、凄い笑顔で、ねぇ
そんな表情を他人にされたことなどあまりなかったもんだから、不覚にもまた驚いてしまったじゃないですかぁ、あぁん?
「…もう、いいんですかぁ?」
「あ、はい!もう当てられないと思うので多分大丈夫だと思います」
「ふーん…」
こちらを不思議そうに見ている神田飛鳥に聞いてみると、また笑顔でそう返してきた
「…今回は特別にぃ、貸してあげましたがぁ、迷惑なので次からは忘れないでくださいねぇ?」
なんだか、少し悔しい気分になったので意地悪くいってやったら、またまたガーン!とションボリとしてしまっていた
つくづく反応が面白いやつですねぇ
まぁ、ちょっとした暇潰し程度にはなりましたか、ねぇ
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