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眠い…神田飛鳥、あいつが学校に来るようになってから何かあるたび、妙に寝つきが悪くなって寝るのが遅くなっちまう
無駄に色々考えさせられてばかりだからに違いねぇ…
そういう時でも、オレ様はいつも通りの時間に起きて、いつも通り準備をして、いつも通りの時間に家を出るから、おかげでここ最近は寝不足だぁ
たいして面白味もない通学路をいつも、ぼーっとしながら歩くだけですがぁ、今日は神田飛鳥と待ち合わせをしている
欠伸をしながら、取り敢えず待ち合わせ場所もとい、あいつと昨日会った場所へ向かった
どの辺に住んでるのとかはまったく知らねぇがぁ、オレ様より早く来てるか来てないかなら、まだ来てないと思いますねぇ
予想通り、目的の場所まで来たが誰もいない
携帯を取りだし時間を見てみると、予定の時間よりも少し早くついてしまったようだぁ
いつもと変わらない時間に出ましたが、歩くのが速かったんですかねぇ?
取り敢えず、まずは約束した時間まで待ってみた
………………
「……来ねぇ」
時間になっても神田飛鳥は現れない
まぁ、いつも早起きしてるわけじゃないやつが、初日からこぉんな早い時間ぴったりにこれるわけないですよねぇ
しょうがないから、もぉ少しだけ待ってやりますかぁ
………………
「来ねぇ!!」
待ってみたがそれでも来ねぇ!!
時間を見てみると、すでに十分以上たっていた
威勢よく宣言していたくせになぁにやってんですかぁ、まったくぅ!!
先にいっちまおうかとも思ったが、急にあいつのしょんぼりとした顔が浮かんだ
「あぁ〜〜もぉ!待ってやりますよ!今日だけ!今日だけなんですからねぇ!」
まぁ、今日は遅れたらおいてくとも言ってなかったですしぃ、登校時間まではまだあるので、しょうがないから待ってやることにした
………………
という、さっきまでの自分の行動を後悔した
あれから待っていても神田飛鳥が来る気配がなく、気がつけば登校する他の木偶どもがわらわらと来る時間にまでなっていた
「あいつぅ、このオレ様をここまで待たせるたぁ覚悟しとけよぉ…」
取り敢えずあれだ、ペナルティを増やそう
なんて考えてみるが、周りの木偶どもの視線がうざくてそれどころじゃねぇ
こんなところに好きで一人で立ってるわけじゃねぇよぉ!!
こっちみんなと木偶どもを睨み付けながら待つ
バタバタと何か来る音がしたので、音の方を見ると神田飛鳥がすごい速さで走ってきた
その姿が近くまできた頃に、オレ様も歩きだし大きく息を吸い込んだ
「おっっっそいですよぉ!!!今、何時だと思ってんですかぁ!?ねぇ!?見てくださいよぉ?こぉーんなに木偶どもがわらわらとわいてくる時間ですよぉ?わかってますかぁ!?ねぇぇぇ!?」
「うわぁん、ごめんなさーーーい!!」
第一声からおもいっきりキレた
さすがに文句を言ってやらなきゃ気がすまねぇ
神田飛鳥も第一声は全力で謝ってきた
「本当に初日から遅れるとかさぁ、やる気あるんですかぁ?ねぇ?」
「やる気はありました、本当です」
「じゃあ、ただの馬鹿なんですかぁ?阿呆なんですかぁ?」
「はい、その通りでございます」
罵倒の雨を降りかける
神田飛鳥も自分が悪いとわかっているのか何も言ってこない…
「まぁ、もともと最初から出来るとか期待してませんでしたから、いいですけどぉ」
反省してるみたいですし、これくらいで許してやった
何か言いたそうに、変に口をもごもごさせてやがったが、結局何も言ってこなかったので気にしないでおいてあげますよぉ
「次こそは…次こそはちゃんと起きてみせます」
「やっぱりさぁ、いつもと同じ時間の方がよかったんじゃないですかぁ?」
「今日はダメだったけど明日からは出来るかもしれないじゃん!諦めないよ!」
「そ、そうですかぁ…まぁ頑張るのはおまえですしぃ、好きにすればぁ〜」
本当にこうと決めたことへの諦めの悪さなら天下一品ですねぇ…
これ以上とめたところで聞くわけがないだろうから、こっちが諦めた
「うん、頑張る!それより、待っててくれてありがとう!てっきりもう行っちゃってるんじゃないかと思ったよー」
「…ただの気まぐれですよぉ。あー、それより何で遅れたんですかぁ?」
オレ様が待ってたことが嬉しかったのか神田飛鳥が、ぱぁっと笑顔になる
何度も置いてっちまおうかと思ったがぁ、自分自身でもよく待ってたなぁと思うくらいだぁ
それに嬉しそうな姿を見て、また待っててやってもいいか、とか思ってる自分がマジでよくわかんねぇ
色々と聞かれても面倒なので適当に話をそらした
「えと、寝坊しました」
「そんなことは大体わかんだよぉ、寝坊した理由はぁ?」
「う、寝るのが遅くなっちゃって…」
「はぁ?早起きしようってやつが何で夜ふかししてんだよぉ!」
「いやー、後藤くんのことで考え事をしてたら、気が付いたらすごい時間になってて…」
「はぁ!?オレ様のことぉ!?」
なんとなくふった話で自分のことが出るとは思わなかった
てゆーか、何ですかぁ?オレ様のことで何を考えることがあるんですかぁ、ねぇ?
あれことですかぁ?あれしかありませんよねぇ?
「どんなことを考えてたんですかぁ?ねぇ?まさか、今さら友だちをやめたいなんて考えてませんよねぇ?言い出したりしませんよねぇ?ねぇ!?」
「違う違う!!そんなんじゃないって!!」
神田飛鳥に詰め寄ったが、どうやら違うらしい
他に何を考えることがあるっていうんですかぁ?
「じゃあ、どういう内容か話せ」という意味を込めて神田飛鳥を睨み付ける
視線の意味を理解して観念したのかポツポツと神田飛鳥が話し始めた
「えっとですね…せっかくちゃんと友だちになったんだし、何かいいあだ名とか呼び方ないかなーっていろいろ考えてました!ほら、後藤くんって呼んでる人たくさんいるし!でも、そういえば私、後藤くんの下の名前を聞いたことがないじゃない!ってなって…じゃあ、どんな名前だろう?とか色々考えてました!」
「は?あだ名ぁ?ってゆーか、今までフルネームも知らねぇやつと一緒にいたのかよぉ!」
あいつが考えていたことがあまりにも予想外というか、ぶっちゃけオレ様からしたらどうでもいい内容で、さっきまでの怒りなんざすっかり消えてしまった
「だって私、初日の自己紹介休んでていなかったし、みんなは後藤くんのこと、名字でしか呼ばないんだもん」
「じゃあ、オレ様とか周りのやつとかに聞けばよかったじゃねーかぁ」
「私もそう思ってたんだけどタイミングがわかんなくて…あ!でも今が聞くチャンスだよね!フルネーム教えて!」
オレ様を凝視しながら、神田飛鳥がキラキラとした表情で次の言葉を待っている
よく考えれば、すぐに教えちまったら面白くねぇ
答えてやろうと開きかけた口を閉じ、ふいっとそっぽを向いて「そんな簡単に教えてなんてあげませんよぉ」と言ってやった
「えー!?そんな!?けちーー!!」
「ケケケ、聞こえませんねぇー?」
悔しそうな顔で叫ぶ神田飛鳥
本当に期待を裏切らねぇ反応をするやつですねぇ
予想通りの反応を見てケラケラと笑うオレ様
だが、次に聞いた「じゃあ、いいもん!昨日考えたあだ名で呼ぶからぁ」という言葉に逆に驚かされた
「どんなのだよぉ?」と聞いてみると、ニヤニヤしながら神田飛鳥が答えた
「うふふ、それはね…『ごっちゃん』でーす!」
「ふざけんなぁ!!!」
却下!!即行で却下する!!
あいつが答えたあだ名候補はそれはそれはふざけたものだったぁ…!!
「えー!?いいじゃん、ごっちゃん!語呂がめっちゃいいじゃない!」
「語呂とかぁどぉーでもいいんですよぉ!!次にその呼び方で呼んだら殴りますからねぇ!!」
「怖いって!!ごっ「あぁん?何ですかぁ?何を言おうとしてるんですかぁ、ねぇ?」
却下したところでやめる気はねぇみたいだぁ
懲りずにまた呼ぼうとしたところで黙らせる
このあだ名で呼ばれるなんて冗談じゃねぇ!!
こういう時のこいつは中途半端に止めたところで折れるようなやつではないのは、ここ最近でよくわかっている…
仕込んでいた三角定規を取り出し、殺気を混ぜつつ再度睨み付けた
さすがにマズイと感じたのか、ようやく諦めたようだった
「しょうがないから、ごっちゃんは諦めるよ…じゃあ、なんて呼ぶのならいい?」
「ケケケ、後藤くんがいやならぁ、後藤様でいいじゃねぇかぁ」
「やだよ!!呼んだときに、全国の後藤さんが近くにいたらどうするのさ!恥ずかしいわ!!」
「心配するとこおかしくねぇ?」
冗談で言ってみただけだが、気にするところがおかしすぎる
このオレ様が思わずつっこんじまったじゃねぇかぁ!
まったく、普通ならもっと他に気にするところがあるだろうがぁ…まぁいいですけどぉ…
「もうどれも駄目だったんだから、やっぱ下の名前教えてよー」
「っち、しょうがないですねぇ…又兵衛ですよぉ、後藤又兵衛」
「じゃあ、『又兵衛』ってこれから呼ぶね!」
これ以上変なことを言い出されても面倒なので、ご希望通り教えてやると、これからのオレ様の呼び方が決定された
「結局呼び捨てかよぉ」
「又兵衛ちゃんがいい?…て、ウソウソ!冗談ですって!!」
あんだけ色々言っておいて、最終的にはただの呼び捨てになったことを指摘すると、またふざけたことを言いやがる
ギロリと睨み付けたらすぐに訂正したがぁ
「しょうがないから呼び捨てでもいいですよぉ」
「私も飛鳥って呼んでもいいのよ?」
「神田でぇ」
「何で!?」
普段なら下の名前で簡単に呼び捨てになんてさせねぇが、こいつの場合はここで折れておくのが一番マシでしょぉ
名前で呼んで欲しそうにいってきたが、んな恥ずかしいことはごめんなのでぇ、それをスルーしてオレ様は名字で呼ぶことにした
「又兵衛、又兵衛、又兵衛」
「何、人の名前を連呼してんだよぉ?」
「今日初めて聞いた名前だからねー、慣れるため慣れるため!又兵衛、又兵衛……」
「あぁもう、うるせーなぁ!」
恥ずかしげもなく練習と称して人の名前を連呼する
聞いてるこっちが恥ずかしくなってきたから、キレてとめた
そういえばあれのことをすっかり忘れてましたねぇ…
「あーそうそう、今日遅刻したから約束通り『シャー芯ボキボキにしてシャーペンに詰め込むの刑』なぁ」
「なんか地味度が上がってる!?シャーペンに詰めるのは聞いてないよ!?代わりに飲み物奢るから、その刑は勘弁して!!」
「…2本なら手を打ってやるよぉ」
思い出したペナルティを追加で増やしたことも含め伝えると、神田が別の交渉をしてきたが悪くない内容だったのでぇ、それで折れてやることにした
オレンジジュースとメロンソーダをリクエストして買ってこさせたが、妙にぷるぷると神田の肩が震えてましたが、ありゃ何だったんだぁ?
まぁ、昼の飲み物代浮きましたしぃ?どーでもいっかぁ〜
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