09


今日はいつもより早く目が覚めてしまったので、珍しく早めに学校へ行くことにした
早朝の空気って、なんだかいつもよりも気持ち良いから好き
まぁ、そんなに睡魔に強くないから、たまになんだけど…


早い時間だけあって人通りはいつもよりも少ない
周りをみても、仕事に向かうサラリーマンや、私みたいに学校へ向かう学生が数えられるくらいだけだ


しばらく歩いたころに、私の少し前の方にも学生服を着た人が一人歩いていた
見たことある人のような気がしたので、少しずつ確認のために歩くスピードを速めて近付いてみる
伸ばした髪を後ろで一つに結び、細身の長身ですごい猫背の男子…間違いない


「おっはよーーー!!」


っと、後ろから大声で叫ぶ
声に驚いたのか、一瞬肩をビクッとさせた後にキョロキョロと周りを見てから、ゆっくりと男子が後ろを向いた
あ、やっぱり後藤くんだ!!


「あぁん、どこのうるっさい馬鹿かと思えばおまえですかぁ…まぁったくぅ朝から驚かせんじゃないですよぉ!」

「うるさい馬鹿ってひどいなぁー、驚かせたのはごめんごめん。後ろ姿見つけたらつい…」


確かに、まさか偶然会えるとは思ってなかった上に、一緒に登校出来るんじゃないかと、はしゃぎすぎて驚かせたのは悪かったと思うが…
しかし、この男、いつにもまして不機嫌顔全開である、眉間のしわが増量中である
ちっさい子が見たら今なら確実に泣くよ、うん…寝不足とかですか?
取り敢えず、驚かせてしまったことに謝罪しておいた


「まぁ、いいですけどぉ…ていうか、今日はまたずいぶんと早いですねぇ?何かあったんですかぁ?」

「あ、いや。ただちょっと早く目が覚めたから、たまには早くくるのもいいかなってね」

「ふぅ〜ん、早起き出来たんですねぇ」

「失礼な!やろうと思えば出来るよ!…頑張れば。そういう後藤くんも、学校にいったらいつももういるけど、毎日この時間に出てるの?」


遅刻ギリギリではないが、いつもは普通よりはちょっと遅めに登校している私がこんな時間にいるのが珍しいのか、表情を少し戻して素直に質問してきた
まぁ、その後の失礼発言はさておき、後藤くんこそいつも私よりも先に学校にいるので、私も質問してみた


「そうですよぉ。どっかの馬鹿と違ってぇ、オレ様は優秀ですからぁ」

「誰のことをいってるのかな?誰の」

「それにこの時間だと他の木偶どももいないからぁうざくないですしねぇ」

「なるほどー」


毎回一言多いんだって、もう
でも後藤くんの言う通り、うざいとまでは言わないが、この静かな通りも清々しくて気持ちいいのは同感する


「…私も今度からこの時間に行ってみようかなー…早朝の空気はもともと結構好きだったし」

「っはぁ?おまえに出来んのかぁ?」

「っう…最初はキツいかもしれないけど、頑張れば出来る!……かもしれないじゃない?」

「別に頑張んなくても、今まで通りでもいいんじゃないですかぁ?」


確かに後藤くんの言う通り、別に今のままでも十分なんだけれども、空気が好きなこと以外にも理由がある


「それでもいいんだけどさー、さっき言ったのもだけど、それ以外に…この時間ならもしかしたらまた後藤くんと一緒に学校行けるかもしれないでしょ?」

「!?おまえってさぁ、よく平気でそういうことをさらぁっと言えますよねぇ…」

「そう?別に友だちと一緒に行きたいって思うのは普通じゃない?」


他の人だって普通に友だちと行ったりしてるし、変…じゃないよね?
それとも、後藤くんは一緒に行きたくない…とか?


「……そうだぁ…友だち、友だちなんですもんねぇ、オレ達」

「……まさかさ、ないとは思うけど忘れてた訳じゃないよね…友だちになったこと…」


まるで確認するかのように、友だちと呟いた後藤くんへ恐る恐る聞いてみる


「違うってぇの!忘れられるわけあるかぁ、あんなこと!」

「えへへ、そうかぁ〜ならいいや」

「…っち」

「舌打ち!?」


ちゃんとわかってた上に、忘れられないくらいのことらしいので、喜んで納得する
そうしたら、悔しそうな顔して舌打ちされた…何故!?
そんな驚いている私など無視して、後藤くんは何か考えているようだったが、すぐにこちらを向いてこう言った
「じゃあさぁ、明日同じ時間に今日会ったところまで来てみてくださいよぉ」っと…


「えぇ!?」

「だって、早起きするって決めたんでしょぉ?」

「そうだけど、明日って急じゃない…かなぁ?」

「じゃあ、いつからやんだよぉ?」

「………え〜と…明後日?」

「さっそく駄目パターンのやつじゃねぇか!はい、決定!明日来いよぉ、同じ場所!同じ時間に!…ねぇ?」


急に決められた予定に軽く反論してみるが、駄目パターンと言われてしまっては抵抗出来ない…
自分でやろうかと言い出したことではあるが、さっそく明日から実行することになってしまった


「でも、明日起きれるかなぁ…」

「なんだぁ?オレ様と行きたかったんじゃなかったのかよぉ」

「神田飛鳥、頑張ります!!」


そうだ、友だちと登校のためだ、早起きなんてちょちょいとしてみせようじゃないか!
頑張るぞーーー!


「はいはい…あ、思い付いた!明日来なかったらペナルティなぁ」

「えぇ!?」

「もし間に合わなかったら、おまえのシャー芯全部ボッキボキに折っておいてやりますよぉ」

「え、なにそれ、すっごく地味だけど何気にすっごく困るからやめて欲しい」

「ケケケ、起きればいいんだよぉ、起きれるならさぁ」


なんということを思い付いてくれたんだ
別な理由でも頑張らなければいけなくなった
ひょっとしたら冗談で、たとえ間に合わなかったとしても、そんなことしないかも
と思ったが、そのあとの授業で私がうとうとした時に、隣で自分のシャー芯を一本、それはもういい笑顔で折って見せてくるあたり、彼なら本当にやりかねないかもしれないと思ったのであった…
明日、一応予備の本数抜いて減らしておこう…





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