08


帰ろうと教室を出ようとした時のことだぁ
廊下を見れば神田飛鳥とその回りに数人の女
あいつの友だちかとも思ったが、様子をみるかぎり、どうやら違うらしい
何やら重い空気が漂っているが、何の話をしてんだぁ?


妙に気になり近付いてみる
すると、先程までの空気をぶち壊すかのように神田飛鳥が話し始めた


「皆が思っているほど後藤くんって怖い人じゃないよ?この間は私が困ってた時に…あ、何で困ってたのかは言えないけど、助けてくれたし、その時のお礼に作ったお弁当なんて、それは酷いものだったけど、何だかんだ全部食べてくれたし、確かに口は悪いし酷いことも言ってくるけど、たまぁーに優しいことも言ってくれるしね!…あ!そうか!これがいわゆるツンデ…痛い!!」


ゴスッと神田飛鳥にチョップを降り下ろす
振り返った顔には少し涙が浮かんでいた、少し強くし過ぎましたかねぇ?
でも、おまえが悪いんですよぉ?恥ずかしいことをペラペラと話しやがるからぁ……
オレ様に気付いた神田飛鳥と女どもを見下ろす
周りにいた女どもは、そそくさと逃げるよう離れていった
まぁ、これが普通の反応ですよねぇ


「いてて…って、いつからいたの!?」

「おまえがぁオレ様のことをペラペラと話してるとこからだよぉ
なぁ〜にしてるんですかぁ?ねぇ?」


さも不機嫌そうな表情をしながら聞くと、しぶしぶ事の説明をポソポソと話し始めた
内容を聞けば、オレ様がヤバいやつと関わっているらしいから、関わらない方がいいと忠告をされた……と


「ふぅ〜ん、そういうことですかぁ…オレ様の事なんだから別に好き勝手言わせて、ほっときゃよかったんですよぉ」

「友だちのこと悪く思われてるのに、ほっておけるわけがないでしょう!?」


そんな風に周りから思われることなんてぇすっかり慣れていたから、軽い気持ちでいつも通りの調子で言うとぉ、声を荒らげながら神田飛鳥が言った
友だち、と……


「っ!!…と、友だちぃ!?オレ様とおまえがぁ!?」

「うん…って、え?違うの!?」


余りにも想定外の単語に驚いてポロッと出た言葉に、しまったと思ったがもう遅かった
みるみるうちに神田飛鳥の顔が赤く染まっていった
まぁ、そりゃそうなりますよねぇ……
違うというか、それ以前にオレ様のことを友だちだと思うなんてことを微塵も考えたことがなかったんだから、しょうがないでしょぉが


「あー…ていうかぁ、おまえ、オレ様と友だちになりたいんですかぁ?」

「なりたいに決まってるじゃない!」


恥ずかしさなのでか、後ろを向いた神田飛鳥に問いかけると、それはすごい勢いで答えてきた
そ、そんなになりたいんですかぁ…?
でも、さっきの話わかってないんですかぁ?
後からやめるなんてことは、まっぴらごめんですからぁ、それなら最初から友だちなんてものはいらないんですよぉ


「さっきの木偶達の話、ちゃんと聞いてましたぁ?オレ様と友達になると他の木偶に避けられるかもしれませんよぉ?それでもいいんですかぁ?」

「そんなの気にしないよ!さっきの子達だって、話の内容はアレだとしても、私を心配して言ってくれたんだろうし、根は悪い人ではないと思うよ?大丈夫大丈夫!」

「もしかしたら、オレ様が本当に噂のやばぁい人達とやらと繋がってるかもしれませんよぉ?それでもオレ様が怖くないんですかぁ?」

「前にも言ったけど全然。後藤くんがいい人ってことは知ってるし、それで十分でしょ!」


「本当ですかぁ…?」と最後に聞くが、神田飛鳥はニコニコとしていて、考えが変わる様子はない
つくづく変わったやつ
普通ならこんな噂があるやつと関わろうとなんて思わないでしょうに
どうしてそこまで前向きに考えられるんですかねぇ


「あーと、じゃあ、取り敢えずこんな私で良ければお友だちになってください!お願いします!!」


バッとオレ様の前に右手を差し出された
本当にこいつの考えることがわからない
このオレ様が振り回される女なんて、滅多にいないでしょうねぇ
この手を取ればぁ晴れてお友だちになるわけですか……


「……あのー?後藤くん?」

「……」

「もしもーし?」

「……」

「……イヤならいいんだ、気にしないで、ごめっ!?」


差し出された右手を凝視しながら考えていていたら、呼ばれていたことに気付かなかった
それを否定だとでも思ったのか、手を引っ込めようとしたのを見た瞬間、気が付いたら慌てて神田飛鳥の手を握りしめていた
無意識に取った自分の行動に気付いたとたん、身体中の血が顔に集まるのを感じた


「あ〜〜もう、わかりましたよぉ!!なってやりますよ友だちにぃ!!……他の木偶よりは話してて退屈しなさそうですしぃ…あ!お、お前が友だちになって欲しいっていうからなってやるんですからねぇ!」


「わかりましたかぁ!?」と最後に握っている手とは逆の手でビシッと神田飛鳥を指さしながら言った
そう、そうだ!こいつがなって欲しいっていうからなってやるんですよぉ!勘違いされても困りますからねぇ……どーしても友だちになって欲しそうだったから、他と比べて一緒にいても居心地悪くなかったですし、楽だったので、なってあげてもいいかと思っただけですからぁ!断じてオレ様がなりたかった訳じゃないんですからねぇ!


「えへへ、うん、わかったよ!これから、よろしくね!」

「〜っ、じゃあオレ様は帰りますからねぇ!」

「あ、せっかくだし一緒に帰らない?」

「お、オレ様、急いでますから!!」

「そっかー…」


こっちは自分の信じられない行動の理由を考えるのに必死だというのに、それはもう嬉しそうにへにゃりと笑いながら話しかけてきた
その上、一緒に帰ろうと言い出してきやがったので断ると、予想よりもあっさりと諦めたから助かりましたぁ…
ただでさえ今の状況にいっぱいいっぱいなのに、冗談じゃないですよぉ!


「残念だけどしかたない、また今度の機会にね!」

「…それじゃ、帰りますぅ………………また、明日」


さっきより若干元気がなくなったのを見たら、妙に後ろめたい気分になったので、聞こえるか聞こえないか程度でそう呟いた後、ダッシュでその場を離れた
後ろから「うん、また明日ねー!!」と叫び声が聞こえてきたので、さっきの言葉は残念ながら聞こえてしまったみたいですねぇ…


今日は本当にらしくないことばかりして疲れましたぁ
でも不思議なことに、悪い気分でないのは何でですかねぇ…



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