「名前、この問題分かるか?」
「えー?ああこれはね、」

なんて言いながら説明するために俺の問題集を覗き込んだ名前の後頭部がちょうど俺の前に来る。
そうするとくるりと円を描くつむじがよく見えて、さらにそのあたりでぴょこぴょこ短い髪が跳ねるのを見てるとなんだか愛しく思えてきてへらりと顔が緩んだ。
かわいいなあ、こんなかわいいのが俺の恋人なんだよなあ。
そんな事を考えればなおさら愛しくて仕方がなくて、思わずつむじにちゅっと口づけをする。

「おひゃあっ!?な、なにっ!?」
「いやーかわいくてつい」
「もう、ちゃんと勉強しなきゃ宿題終わらないでしょー!」

名前は俺を叱りつけるくせにしっかり顔を赤くして、しかもちょっと嬉しそうな表情だからますます愛しくて仕方がなくなる。
だからぷりぷりしてる名前をぎゅっと抱きしめたのはやっぱり仕方のない事だろう。

「わわっ、はっちゃん何してるの!」
「名前がかわいすぎるのが悪いんだ」
「は、はっちゃんっ!」
「嫌か?」
「嫌じゃないから困ってるの!もうっ、大好き!」
「俺もこの世でお前が1番好きだ!」
「えへへ、ありがとはっちゃん」

赤い顔のままで俺を抱きしめ返してにへっと笑う名前は本当にかわいい。
すっぽり腕の中に収まるところもかわいいし、俺よりひとまわりも小さい手で俺の服を握り締めてるのもかわいいし、ちょっとだけ薄い赤になってる耳もかわいい。

「…はっちゃん」
「ん?」
「ちゅーしていい?」
「…うん、俺もしたいって思って、」
「だあああああっ!!!おいお前ら人の部屋でいちゃつくなっ!」
「あっ、ごめん三郎」
「ついはっちゃんといると周りが見えなくなっちゃって」

てへっと笑う名前に合わせててへっと笑えば帰れ似たもの夫婦!と三郎に怒鳴られる。
似たもの夫婦だって。
怒られてるんだけど嬉しくて名前を見れば、同じ気持ちだったのか名前もえへへと笑った。

「君たちは本当に仲良しだねえ」
「まったく、仲が良いのは結構だが今は宿題をみんなで片付けようという名目で集まっているんじゃないのか?」
「悪かったって!」
「宿題に集中するから許して!」
「次にいちゃつきだしたら追い出すからな!」
「分かったよ」
「ごめんなさーい!」

二人で三郎に返事をして顔を見合わせる。
えへへと笑い合ってからさっきの問題の解説を名前にお願いした。
解説をする名前の声はふんわりしていて優しい。
俺、名前の声も好きだなあ。
またひとつ好きなところをみつけてだらしなく顔が緩む。

「それでね、ここは…ってはっちゃん聞いてる?」
「えっ、ああ聞いてる聞いてる!」
「聞いてなかったでしょ!聞いてたなら私がここまで解説したの説明して」
「聞いてたけど名前がかわいくて頭に入んなかったんだよ」
「はっちゃん…!」
「名前…!」
「もうお前ら出て行け!!」
「ええーそんなあ!」
「今から真面目にやるから!」
「出て行けー!」

…結局こんなやり取りを何回か繰り返した結果、俺は切れた三郎によって七松先輩とバレーボールの刑に処せられた。
でも名前が一生懸命応援してくれてかわいかったから問題なしだよな!

「はっちゃん頑張ってー!」
「おー!頑張るぞー!」
「いい加減にしろバカップル!」


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