※現パロ

決戦の時は、来た。
彼女いない歴イコール年齢の俺、竹谷八左ヱ門、現在大学二年生。
そんな俺は今、最初に述べたように決戦の時を迎えている。
男女問わず友だちの多い勘右衛門に頼み込み、雷蔵、三郎、兵助に協力を要請し、ようやくこぎ着けた今日この日…!
俺は絶対に勝利する!
そう、合コンという名の合戦に!

「はいじゃあまず自己紹介からー!俺は尾浜勘右衛門でーす。よろしくねー」
「不破雷蔵です。よろしくお願いします」
「鉢屋三郎」
「た、竹谷八左ヱ門です!よ、よろしく!」
「久々知兵助です」

噛んだ!と思ったけど、女の子たちは普通に勘右衛門の進行で自己紹介をしはじめていて、気にした感じはない。
あ、あっぶねー!
こいつマジテンパり過ぎウケるー!とかいう反応されたら死んだけど、そんな雰囲気はどこにもない。
まあ三郎のやる気がないどころじゃない自己紹介のあとだからな…そっちに目がいっててきっと俺の印象はそこまで残らなかったんだろう。
…あれ?それっていいのか?
よくないような気がしながら、それでももうどうにもならないので考えないようにして女の子たちの名前を必死に覚える。
しょ、正面の子…名字名前ちゃん、かわいいなあ…。
そんなことを考えながら見ていたらばっちり目が合ってビクッと体が揺れる。
うわやべ、挙動不審だと思われる!

「あ、えと、よろしくな!」
「え?うん、よろしく!」

テンパっていきなりよろしくとか言っちゃったけど、名前ちゃんは一瞬驚いたあとにっこり笑ってくれた。
うわあ、いい子だなあ…。
きゅんとしながらも勘右衛門の進行に従ってとりあえずみんなで乾杯をする。
カツンとぶつけた名前ちゃんのグラスはオレンジ色をしていて、なんかかわいいの飲むんだなあとまたきゅんとした。
そのあとも勘右衛門の話に笑ったり、サラダを取り分けてくれたり、さり気なく皿をさげてくれたり、気が利く名前ちゃんの姿にいちいちきゅんとして。
合コンが終わる頃にはヤバい、これは完全に好きだと思うほど名前ちゃんにドキドキしている状態にまでなっていた。

「今日は楽しかったねー」
「う、うん、めちゃくちゃ楽しかった!」
「またみんなで飲みたいね」

にこにこ笑いながら言う名前ちゃんにうるさくなる心臓。
やっべー、めちゃくちゃかわいい。
でももう分かれないと終電来ちゃうもんなあ…。
メアドとか…き、聞く勇気ない…でも、これで終わりにはしたくない。
聞くか…聞くべきだよな…絶対に聞いた方がいいに決まってる…。

「竹谷くん?」
「うえっ!?な、なな、何っ!?」
「あはは、酔ってる?ぼーっとしてたよ?」
「い、いや、うん、ちょっと酔ってるかも?」
「やっぱり。気をつけて帰りなよー?」

おかしそうにくすくす笑う名前ちゃんにまたきゅんとする。
よし、ここはやっぱり勇気を出してメアドを聞こう!
ファイト俺!

「竹谷くん」
「ふぁいっ!?」
「ふぁい?」
「あ、いやっ、ごめん何?」

テンパり過ぎだろ俺ー!!
内心涙目になりながらそれでも名前ちゃんに続きを促せば、名前ちゃんはちょっと照れた顔であのね、と続けた。

「もし嫌じゃなかったら、メアド交換しない?」
「………?」
「竹谷くん?」
「あれっ、えっ!?メアド交換!!!?誰と!?あっ、あれか、兵助か勘ちゃん?それとも雷蔵?…もしかして三郎?」

酔ってるせいで都合のいい解釈をしそうになっちまったぜ!
ははは、俺と交換したい訳がない。
今までの合コン相手だってみんなそうだっただろ。
学習しろよ俺!
自分を諫めながら早口で誰のを聞きたいのか尋ねると、名前ちゃんは困った表情で違うよ、と小さく言った。

「…え、違う?」

兵助でも、勘ちゃんでも、雷蔵でも、三郎でもない…。

「じゃあ誰…って俺!!!?」
「うん、竹谷くんと。だめ?」
「いっ、いえ!もちろんよろしくお願い致します!」
「…竹谷くんて、面白いね」

くすくす笑いながら携帯を出す名前ちゃんにきゅんとする。
あああ、マジでヤバい、かわいい!
顔を真っ赤にしながら携帯を出して、震える手でメアド交換をなんとか済ませる。
アドレス帳に増える名字名前という名前。
この携帯にほとんどない女の子の、名前。

「またメールするね」
「う、うん…!」

にっこり笑う名前ちゃんに胸をときめかせる俺はこの時まだ知らなかった。
1ヶ月後、この子が俺の人生初の彼女になる事、三年後、この子が俺の生涯の伴侶になる事。
そして何より、この子が狙った獲物は逃さない、羊の皮を被った超肉食系女子である事を。

のちに勘右衛門は語る。
合コンであんな見え見えの手にあっさりかかる男は八左ヱ門以外に見た事がない、と。


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