※現パロ

「こんな時間にごめん…」
「何言ってんだよ、気にすんな」

深夜一時。
非常識にもほどがある時間に電話した私の部屋に竹谷はすぐに駆けつけてくれた。
そんな竹谷の優しさに感謝すると同時、一人では何もできない不甲斐なさに唇を噛み締める。
だけど竹谷はそんな風に自己嫌悪に陥る私をぎゅっと抱き締めて宥めてくれた。
竹谷は優しい。
こんな私のために走って駆けつけてくれて、甘やかしてくれる。
そんな竹谷に甘えてばかりでは駄目だと本当は分かっているのに、あまりにも竹谷のそばが心地よくて離れられずにいるのだ。
別に恋人なんかじゃ、ないのに。

「…竹谷」
「心配するな、俺に任せろ」
「………」
「そんな顔すんなよ。何のために来たと思ってんだ?」
「ごめん…こんな事、頼んで…」

ぐずぐずと涙がまた出て来て情けなくなる。
だけど竹谷は何も言わずに私の頭を優しく撫でてくれて余計に泣けてしまった。
どうして竹谷はこんなに優しいんだろう。
その意味を考えているうちに竹谷は待ってろ、と私に言って私の部屋へ入ろうとする。
だけど私はそんな竹谷の服を掴んで引き止めた。

「あの…」
「どうした?」
「私、も…私も、行く」
「…お前はここで待ってろ。俺が全部やるから」
「ううん、行く…」
「…分かった。俺から離れるなよ」
「うん」

絶対に離れない。
そう頷けば竹谷は仕方ないなという風に笑ってまた私の頭を撫でる。
それから真剣な表情になって部屋の中を見回した。
慎重に音を立てずにゆっくり前に進む。
私と竹谷の呼吸とつけっぱなしのテレビの音だけが部屋に響いてまるでホラー映画のようだと場違いな事が頭を掠めた。

「………」
「お前には近付けさせない」
「うん…」
「俺を信じろ」
「うん…っあ、」

竹谷に縋るようにしながら頷いた直後、部屋の隅にいるそいつが視界に入った。
目が合うなんて、そんな事があるはずないのにそんな気がして顔を逸らす。

「名前…ちゃんと俺を見てろよ…」
「…竹谷」
「あいつは俺がお前の為に俺の全力で叩き潰してやる!」
「っ、お願い!倒して!」
「おう!」

そう返事をするやいなや、竹谷は口元に笑みさえ浮かべて素早く壁際に近付き、ばしり!と壁を叩く。
見事にクリーンヒットしたそれで奴は一発で崩れ落ちるけど、敵はそいつだけじゃなかった。
そいつがいた場所の更に奥、ラックの死角になっている場所へそいつは潜んでいたのだ。
かさかさと音をたてて移動を始めるそいつはまっすぐ私の方へ向かって走ってくる。

「ひっ!」

短い悲鳴を上げた次の瞬間。
すぱーん!と派手な音と共にそいつの進行は停止した。

「竹谷…」
「お前に近付けさせないって言っただろ?」
「っ、惚れてまうやろー!」

叫んだ私の隣りの部屋、つまり三郎の部屋からうるせえぞ!と聞こえてきたけど、すべてまるっとさくっと無視して、私は救世主竹谷とキャッキャッウフフするのであった。


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