一日一文 | ナノ


雲雀さんは、危ない
それは警察が言う危険等ではなく目が離せないと言う様な危険だった


「・・・雲雀さーん」
「なに」


匣兵器専用の研究室では雲雀さんがスーツを着込んで紫色色の匣を掌でころころ転がしながら専用の高そうな回転椅子の背もたれにねっころがっていた
そこらには沢山の書類や又はリング、万年筆が綺麗に整頓されていて何だか生活感が余り無い
数日前に来た時と書類の量以外は相変わらず変わらずわたしは溜息を吐いた


「何日食べて無いんですか?」
「君が最後に来た日以来かな」
「まさか三日も珈琲生活したんですか!」
「ちょっとうるさいよ」


雲雀さんは面倒臭がりやだ、身嗜みとかなんとかには口うるさいのに不思議なぐらい自分には変な所で無頓着でこうやって一つの事に夢中になると食生活や朝夜逆転など不健康極まりない生活をする、今時の未熟児でもこんな不健康な生活しないだろうに
だからこんなにやせ細って青白い肌をしているんだ、まるで女の子みたいに細い裾から顔を出す腕を見て思う


「何か食べたい物ありますか?」
「特に無い」
「・・・知ってますか雲雀さん、人間成人時よりも5キロ以上体重が落ちると死亡率がすごく高くなるそうです」
「へえ、それで君は何が言いたいの?」
「雲雀さん絶対わたしより先に死にますよねって事です」
「何の冗談?僕が死ぬって?」
「そう思うなら何でもいいのでちゃんと食べて下さい!」


すこしきつめに声を立てて言えば雲雀さんは目をちょっとだけまるくした、普段わたしがこんなに煩く言わないからだろうかそのぐらいわたしは心配しているのだ、でも、やっぱり言いすぎたかなと反射的にそらした視線を雲雀さんに戻す、雲雀さんはまたいつも通りの無心の顔に戻っていた


「じゃあ、毎朝僕のために味噌汁作って持ってきてよ」
「・・・食べてくれるんですか?」
「別に空腹じゃないって訳じゃないからね」


そう言って偉そうにも匣を机に置いて足を組み直す雲雀さんにやっと安心する、ちゃんとわたしの心配する気持ちとか危機感をわかってくれたんだろうか、胸を撫で下ろしてふと、ぼんやり意味もなく思ったことを先走った


「毎日味噌汁とか、わたし雲雀さんのお母さんみたいです」


雲雀さんが和食派なのは知っているけども朝ご飯をわざわざ作ったりなんてわたしのイメージではお母さんっていうのがピッタリで、そう笑えばきょとんとした顔の雲雀さんがわたしを見た


「違うよ、君は僕の嫁だ」
「・・・は、?」
「言ったでしょ僕に毎日味噌汁作ってくれない、って」
「・・・、え、なっ、そういう意味、で」
「全く鈍感だね」


途切れ途切れの言葉を繋ぎながら息をだすばかりで吸うのを忘れていたらまるで吸い込まれるように雲雀さんが近づいた、距離が近まるたびにドクドク波打ちが速くなる心臓を服の上から無理矢理ひっつかむ
そんなわたしを見てにやりと雲雀さんはいやらしく笑う、なんですかそれ、プロポーズになんか到底聞こえないです、そう言おうと何度も唇から吹き込もうと思うのにどうしようもなく空回り、見兼ねた雲雀さんは音をたて笑い、わたしの唇を奪うのだ


「分かった?」


濡れたピンクを拭いように触れてからぎゅっと逃げないようにと手を握られた、イエスしか言えないに決まってるじゃない、ですか



似非プロポーズ
(0323)
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