人魚姫 | ナノ

王子様は命の恩人の人魚姫を探した、そう、彼は人魚姫に恋をしていたのだ、だが現実とは実に虚しく人魚姫には気付ず事実は捩曲がり王子は勘違いをして町娘を命の恩人だと思うのであった



王宮の中は見た目通りすごい綺麗で見たこともない環境に戸惑いを隠せない、使用人の人に何故か大層なドレスに着替えさせられて呆然としたままのわたしは王子様にまた引っ張られとある一室にたどり着いた、王子様と向かい合わせに座りにこりと笑う彼が嵐の夜の人魚姫の事を話す、わたしは口を開いた


「それは、わたしじゃありません!」


なのに笑って嘘やろなんてきいてくれない、そして掌のダイヤを細い指が取り上げわたしの左手の薬指にはめた、憎いぐらいにすんなりとはまるそれに驚きながらも違うという証拠がなくなり落胆をする、王子様はわたしの気持ちなんて知らず微笑むばかりだった


「俺の命を救ってくれた貴方には感謝をしとる」
「・・・」
「どうか、俺と結婚してくれ」
「っ」


ぎらぎらとわたしを捕らえて離さない瞳に、息を詰まらせた、なんて綺麗なんだろう、あんまりにも期待にこめられたそれはわたしの心臓をぎゅうと掴んだ、ああ、わたしはなんて醜いのだろうか、不覚にもその瞳から逃げられない、苦しくなったじんわりと目尻が熱くなった
きっとこの言葉を望んでいるのは人魚姫だと知っているのにこの言葉はわたしじゃなく人魚姫に与られるものだと言うのに、なのに
気づけば首を縦に振っていたわたしはどんなに愚かなのか







少したって、嬉しそうに話する王子様はほんのすこし近づいた、王子様なんてよそよそしい、蔵とよんでや、そう言われて使命感に終われ蔵と呼んだりたくさん話をした、蔵さんのこと以外にも一番信頼しているさっきも行動していた相棒の謙也さん、コックの小石川さんに勉強を教えてくださる小春さん、服を全般作る一氏さん、武道鍛練の先生の銀さん、執事の財前さん、彼の世界にずぶずぶはまるわたしがいるのには自分が一番分かっていて、すこし嫌気がさした



醜いわたしは何処に逃げればいいというの

駄目だとわかっているのに抜け出せない



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