お見合い | ナノ


もぐもぐもぐ
仕切りに増えるお皿のタワーを目の前にわたしはぼんやり眉を下げた、わたしの目の前にある注がれた醤油は一滴と使われておらずそれにともない周りの客も一人といなかった、沈黙の中ただ一人がためにオーダーされる声や若しくは満足げに聞こえる歯の音だけ


「お、美味しいですか?」
「うん」
「お寿司好きなんですね」
「うん」
「・・・」
「もぐもぐもぐ」


会話終了、空気が重いです
わたしの知っている彼は確かきいた話によると食事を三日忘れるぐらい仕事熱心だと、きいたような気がしたけれどこんな大食なんて想像もつかなかった、細い胸板のどこの胃にいれてるんだろう、そう思うとなんだかわたしは箸を割るきにもなれず最近メーターがあがった体重計をぐるり思い浮かべた


「・・・はあ」
「ねえ」
「ん、なんです、むぐっ」


雲雀恭弥の手が伸びてきて爪先に視線をよせた瞬間にわたしの口は悲鳴まがいな声をあげた、唇にぴたりとくっついたのはお米で雲雀恭弥はわたしの反応が当然とばかりに真顔だった、そしたら口に放り込まれて、舌で口内を探り次には歯を動かした


「美味しい?」
「美味しい・・・です」
「君も食べなよ、つまらないでしょ」
「え、ええ」


半場無理矢理食べさせられたお寿司は高級なだけ美味しかった、でもなんだかゆるりと羞恥が上がってきてわたしはうつむいて箸を割る、気付かないうちに雲雀恭弥はまた口を動かしはじめる、なんてマイペースなんだろう、なんて思ったけどそれを口にはできなかった


「へ、ぐっ」
「食べなよって言ったよね」
「ふゃ、ふぁい」


何故ならまた雲雀恭弥にお寿司を押し込まされたからだった
雲雀恭弥って、やっぱりなんかよく分からない



喉奥に引っ越したロマン



よく分からないけどさっきよりは居心地悪くない



(0712)
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