気分が最高潮で、思いも寄らないことを先走ったり逃げたりするのがわたしの癖だ、「今日とか!一緒に帰りませんか!」なんで敬語になったのとかわからないままに財前くんに言ったらあっさりと校門、とそれだけ言われた
部活が終わって急いで制服に着替えて玄関を潜った、今日は珍しくテニス部の方が早く終わったのらしい財前くんがヘッドホンを耳に引っかけいつもどおり怠そうに自転車を掲げていた、小走りでわたしはそこへ向かう


「お!遅くなってごめんなさい」
「走ってこなくてもええのに」
「や、遅れたので」
「・・・んじゃ帰ろか」


話かけられるのが普通な今がどうにもぎこちなく嬉しくて無意味にわたしは制服の裾をぎゅっと握った、カラカラと自転車を押す財前くんの背中に足をゆっくり運んで視線を固定させる


「・・・なんやねんその顔」
「や、なんか」
「・・・」
「財前くんとわたし殆ど面識無かったからつきあえるとか思っていなかった、から」
「・・・あー」


なんだかあんまり興味なさげに財前くんはのばした声をあげた、少し気になってほんのすこし近づこうとしたらザワザワとした生徒が横を通り過ぎてゆくのがみえる、わたしはそちらをみてからまた財前くんをみたらわたしから視線はずれていて斜め前を見ながら少し嫌そうな顔をしていた、わたしはそのままその線をゆっくり辿ったら前にも見た赤い髪にミルクティーを溶かしたような色が二つ見えた


「あーっ!ひかるが女といるで白石ー!」
「コラ、女の子の方びっくりしてるやろ」
「・・・部長に金太郎」
「なーひかるーコイツ誰なんー?」
「え、わ、わたしは」
「金ちゃん財前の彼女や、黙っとき」


かかか彼女・・・!たった一言なのにわたしはバッとテニス部の部長さんが言った言葉に反応する、確かに彼女なんだけど、やっぱりついさっきじゃ感覚がイマイチ麻痺しているみたいに感じなくてぼやぼやと曖昧なのだ、なのにそれひよく浸る時間はわたしにはくれないらしくガラガラさっき音がしていた車輪の音が響く


「うるさいっスわ」


それだけ残して財前くんは背中をみせてわたしじゃなく自転車を連れて歩いていってしまう、びっくりしてわたしは財前くんを追い掛けたが先輩に挨拶してない、失礼だよ!と思って顔だけ振り返らせたら、部長さんと目があってへらりと包帯の巻いた手の平を振られた
慌ててお辞儀をしてから再び前をみていつもの背中を追い掛けた
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