部活の時間は楽しい、でも勿論普通の授業中も少しだけ楽しくなった、勿論隣の席が仲がいい子だからとか勉強に集中出来るとか風がよく入って涼しい、とかもあるけどあの背中をみるたびに押し潰されそうに普通とは違う感情でいっぱいいっぱいになる、それは居心地のいい物だった、空を切って走るのとは違う不規則なリズムで鳴る心臓が


「おーみょうじやん!」


ブンブン、渡り廊下で靴をはきかえていたら腕がとれるんじゃないかってぐらい振っている忍足先輩がみえた、部活の休憩中なのかタオルを首から垂らしていた、忍足先輩はすごく足が早いかなり早いチーターにも負けない速さで本人曰くスピードスターとか言っていて、名前はなんだか冗談っぽいけれど本当に早くってたまに陸上部にも顔をだしにきてアドバイスをくれたり、すごく良い先輩の見本だと思う!靴紐を結んでいる手じゃない方の手でヒラヒラゆるく振り替えせばパタパタ忍足先輩は近づいてきた


「またタイム縮まったんやってー?」
「えへ」
「やるなあこの期待の陸上の星!」
「忍足先輩こそ全国大会、頑張ってくださいね!」


そういったら笑顔が耐えない忍足先輩がわたしの頭をぐしゃぐしゃーとかきまわした、まるでお兄ちゃんみたいな存在な忍足先輩がやっぱり大好きだと再確認して乱れた髪なんて気にせず笑った、そのとき耳の片隅でトントン一定のリズムの足音が響いた


「謙也くん」
「なんーーーって財前!お前なんで部活来いへんの!」
「委員会だったんスわ」
「それでも携帯ぐらいでるやろ!」
「あー先輩に言ってませんでした、アドレスと番号変えたんで」
「早く言えアホ!」
「先輩がアホちゃうんですか?」
「・・・まあええ、メアドだけでも教えろや色々都合あるんやし」


渡り廊下の前で二人話しているのをなぜだか反射的にみていたら何だかよくわからないチャンスが舞い降りてきた、あ、わたしにも教えて、言おうとしたのに何故かうまく声がでなくてぱくぱく口を動かすだけになってしまう、もどかしいのに財前くんの口は忍足先輩しか向かっていなくてはがゆさに負けそうだ、忍足先輩は必死に持っていたメモ帳にペンをぎこちなく握ってかいていて財前くんの唇が閉じた後から暫く立ってから紙から顔を上げた、丁度その時ちっちゃい男の子がぴょんぴょん跳ねながらやってきた


「謙也〜白石がよんどるで〜」
「え?白石?」
「あっ光もきてるやん!早く行かな白石が毒手かますゆうてたで!」
「あー・・・めんどいっスわ」


ちっちゃい男の子に連れられ二人は駆け足で去っていく、その瞬間ひらりと紙がなびいたのがみえた、ひらりひらり花びらが落ちるみたいに紙は地面にはいつくばる、わたしは立ち上がってそれを拾ったらやっぱりさっき忍足先輩が一生懸命にかいていた紙だった、そう、それにはアドレスがごちゃごちゃにかいていた、わたしは急いでポケットにいれていた携帯を取り出して新規メールを立ち上げ送信先アドレスにその書かれている文字と一緒のものを打った、メール、メールできる!それだけしか考えられなくて、えーと何かこう、「同じクラスのみょうじなまえです」なんで同じクラスなのに後ろの席なのにこんな説明をいちいちかいてるのにもツッコミができないほどに「よかったら、」わたしは恋をしていた


つきあってください。


「・・・なーんて」


好奇心で打ってみた、予測変換が出なかったのはわたしがこんな言葉打つのが初めてだったからだ、画面を改めてみて少しの羞恥に覆われた、わたし何してるんだろそもそも財前くんからみたら何でわたしがアドレス知ってるかって感じだし、アホだなあ自分!笑い飛ばして消すはずだったのにクリアボタンから手が外れていたのに気づかなかった、ピッ、無機質な音がした後に笑いながら画面を見てわたしは目を大きく開いた、うそ


メールを送信しました


「え、ええええ」


うわ、なにしてるのわたし最悪だ、携帯をきつく握ってとりあえず頭を落ち着かせようとしたのに、さっきと同じ足音が響いた
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