切る切る、見えない宙を体で切って白いラインを切ればふわっと体の力が抜けた、呼吸が息をついてムリヤリに酸素を口の中に押し込んだ、マネージャーがストップウォッチを持ってこちらに嬉しそうに走ってきてわたしの気持ちも上がった


「やっ、たっ!」



ストップウォッチに表示されていた文字は前に走った時よりも随分早い数字だった、両手を上げてばんざいしながらマネージャーとふたりしてニコニコ喜ぶ、走った後の爽快も大好きだけどタイムがあがったこの瞬間も嬉しくて堪らない、でもちょっと疲れてしまったから汗がぐいぐい押しやる首や顔をタオルを押し当てて水道がある校舎の方へと休憩がてら歩いていた、まだ空は青いなあなんて上を見上げていたらパコーンパコーンと軽い音がしてふいに視線を下げたらテニス部がぞろぞろあつまるコートが見えた、目を細めて中を見れば練習試合をやってるみたいでコートに人が散らばっている、その中にやけに目立つ黒色が見えた、・・・あ、財前くん、最近知った名前を頭に上げた瞬間頬がやけに熱くなった、いつの間にか足は止まっていてテニス部の門のまえで不自然にわたしは一人立ちすくむ
テニスしてる時もピアスしてるんだ、先輩方なんも言わないのかな、そんな最初は軽い気持ちでみていたはずなのに黄色のボールに食らいつくようにコートを走る財前くんに自然に見入っていた、パコーン、絶対追いつかないだろうっていう距離でも追いついていてちょっとびっくりした


「足・・・早」


男女の差ってやっぱりあるものだろうけど陸上部のわたしより早いかもしれない、いつもはあんなだるそうなのにな、思えば思うほどになんだか少し心臓が鳴るのが早く感じる、ドキドキ、その時、ふいに風がふいて前髪が上へと逃げた瞬間パチリ結構な距離なのに黒い瞳とぶつかった気がした、慌てて下をうつむいて後に校舎へと走った、目あった、どうしよう顔が熱い
わたしがこの感情に気付くのも鈍感じゃないから、すぐに分かった、


「好、き・・・」


なんで好きになったのかはわからなくて、でも答えがでなくても満足でいっぱいだった
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