ぶくぶく、入浴剤をいれておいたぬるい温度の波に口を沈めて二酸化炭素を逃がしてく、泡がたくさん舞い踊るのをわたしは呆然と見るが頭はその斜めにむいていてちらちら視線も動いてしまう、デリカシーの欠片もないものに


「・・・なに、その目」
「何でわたしが入ってるときに入ってくるんですかー・・・」
「別にいいでしょ、やること済んだ仲なんだから」
「なっ!そういう問題じゃないです!」
「どういう問題?」
「それ、は、・・・むむむ」


言い訳が見付からない、また逃げるとばかりに唇をお湯にくっつけると髪の毛を洗い終わったひばりさんがバスタブにずかずか入り込んできた、お湯は水かさが増えわたしは飲み込まれちゃぷん、手で口を拭った


「狭い、です」
「ふうん」
「察してください!」
「なんで、そんなに嫌がる訳」
「なんで、って・・・だ、って狭いし、」
「そうじゃないでしょ」
「っ・・・」


白い溶けてしまったお湯から伸びる手はわたしの濡れた頬に吸い付いてくる、電気からそっぽを向くようにふつむいた、やっぱり口はうまく動かなくって、縮こまって膝を抱えた指をぎゅうと握った


「だって、明るい、じゃないですか」
「・・・はあ?」
「わたし今すっぴんですし」
「結構変わるよね」
「黙れ美形!」
「・・・そんなこと気にしてたの?」
「だ・・・って、」


まともに顔があわせられない、別にわたしはそこまで不細工でもなければ綺麗でもない普通だ、それでも雲雀さんのまわりにいるひとって可愛いこばかりだからわたしもちょっと頑張ってみたけどあくまでそれは化粧であり、肉体じゃない
ゆるゆる、少し瞼が重くなってきた


「雲雀さんだって・・・かわいい、方がいいでしょ・・・う」
「別に」
「・・・え」
「君だってわかれば僕はなんだっていいよ」
「な、わたしの悩みと苦労を!」
「それに」
「?」
「結婚したときそんなこと気にしてたら君過労死するよ」
「け、・・・っ!?」


息がつまってわたしは喉奥に悲鳴を残した、結婚、結婚!?話がぶっ飛びすぎて頭がついていかない、恋人止まりのわたしからとったら、それは、もうなんと言うか言葉にできない代物で、だって、そんな話一回もしたことなかったから
色々フリーズしたわたしはうつむいていた顔を勢いよくあげた、ゆるりバスタブのお湯が揺れて焦点がぴったりあった


「やっと僕をみてくれた、」


雲雀さんはそのまま微笑んでわたしを引き寄せる
ざばん、猫足のバスタブからぬるいぬるいお湯が逃げ出し、次にわたしの唇がつけたものはまたもやぬるい口内の熱だった



揺れるバスタブ デリカシーにさようなら



(0702)
ありがちお風呂ネタ

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